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一般皮膚科・形成外科

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湿疹・皮膚炎 じんましん、痒疹

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎は多因子性の疾患で、気管支喘息やアレルギー性鼻炎などの既往や、IgEというアレルギーに関連する抗体の上昇がみられるといったアトピー素因を持つ人に生じます。また、バリア機能の異常も伴い、皮膚ではセラミドなどの細胞間脂質が減少し、フィラグリンという遺伝子に変異があるとバリア機能が壊れやすいことも知られています。皮疹は年齢によって異なり、乳幼児では、まず頭や顏に乾燥や赤みが生じます。病勢が強いとジクジクした湿疹となります。2~12歳の幼児期・学童期では、顔面の皮疹は減少し、代わって首、わきや、膝、肘の内側、手首、足首に多くみられるようになります。16歳以上になると、顔、首、胸、背中などの上半身に乾燥や苔癬化といった皮膚が厚くなる所見が多くみられます。ダーティーネックといった首の色素沈着も特徴です。このように皮疹は慢性化し、軽快してもぶりかえします。ただし、発症率は年齢とともに低下し、小学生1年生の時にアトピー性皮膚炎であった75%は中学入学時に寛解したという報告もあります。
アトピー性皮膚炎の診断では、補助的に採血を行い、血中のIgE、LDH、好酸球数、TARC、SCCA2などを調べますが、これは病勢やアレルギー体質をみるためで、最終的には経過や皮膚の状態など臨床医の眼が大切になります。ダニやハウスダストなどのアレルゲンを特定することは、悪化因子を除去する上では重要ですが、根本的な原因を突き止めるものではありません。また、菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)やSézary(セザリー)症候群といった皮膚のリンパ腫や疥癬などの感染症、魚鱗癬といった角化異常や膠原病などとも鑑別を要する症例があり、適宜皮膚生検を行い診断が正しいものかチェックする必要があります。
治療は症状に合わせてステロイド軟膏やタクロムリス軟膏(プロトピック軟膏Ⓡ)などの外用療法、そしてスキンケア(保湿剤の外用)、悪化因子を取り除くことが基本となります。近年は細胞内シグナル伝達(JAK)を抑制する外用薬であるデルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏Ⓡ)やホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害薬であるジファミラスト軟膏(モイゼルト軟膏Ⓡ)も使用できるようになりました。併せて抗アレルギー剤を内服することもあります。このような治療で、皮膚をいい状態に保つことができれば、定期的に外用を行い炎症の悪化を防ぎます。しかし、皮疹のコントロールが難しい場合は、シクロスポリンの内服、デュプリムマブ(デュピクセント)の皮下注射、JAK阻害薬の内服、紫外線を照射する光線療法などを行い、寛解導入を目指します。そして、早期に炎症を抑え、その後は保湿剤、ステロイド外用剤、他の抗炎症外用薬を用いて寛解の維持を行います。症状が落ち着いているようにみえても弱い炎症は続いているため、間隔を空けつつ定期的に外用薬を塗り、炎症の再燃を抑制するプロアクティブ治療も有用です。治療のゴールは症状がないか、あっても軽微で日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態で、診察をしながら治療法を調整していきます。

悪化因子の対策

肌が乾燥すると、バリア機能が低下して外からの刺激を受けやすくなり、アトピー性皮膚炎を悪化させる可能性が高くなります。日常を通して、十分な保湿剤で肌のうるおいを守り、特に乾燥する季節は、加湿器を活用するなどして室内の湿度にも気を配ることも大切です。洗顔するときに肌をゴシゴシこすったり、刺激の強い洗浄剤Sを使ったりすることで肌のうるおいに必要な皮脂膜が失われ、悪化しやすくなります。また、肌触りのよい衣類を選ぶことも重要で、羊毛素材やごわごわした素材などは避け、綿の下着がおすすめです。髪の毛も痒みを誘発することがありますので、短く切る、束ねるなどの工夫も必要です。汗や汚れも発症の原因となります。ただし、汗をかくことを避ける必要はなく、発汗後はなるべく早いうちにシャワーなどで流すか、やさしく拭き取り衣類を着替えます。肌を洗って清潔にしておくことは大切ですが、洗いすぎには注意が必要です。
食物アレルゲンの関連については、詳細な病歴の問診、皮膚テスト、血液検査などとともに、原因食物の除去の後に経口負荷試験を行います.ただし、経口負荷試験は専門の医師の指示に従ってください。臨床症状のみ、あるいは採血で食物の特異的IgE抗体価が陽性であってもそれのみを根拠とすべきではありません。また、アレルゲンになりやすい食物というだけで摂取する食物の種類を制限することは避けてください。

脂漏性湿疹(皮膚炎)

頭部、毛の生え際、耳の後ろ、鼻の周りなどの、あぶらを出す皮脂腺の豊富な部分(脂漏部位)に好発する境界明瞭な湿疹(皮膚炎)を特徴とします。原因として皮膚に分泌された皮脂中のトリグリセリドや、真菌(マラセチア菌など)によって分解された遊離脂肪酸が皮膚を刺激して皮膚炎を起こすという説、あるいはアレルギー説が有力です。マラセチア菌は脂漏部位に多く存在し、あぶら症の人に多いといわれていますが、実はどんな人の皮膚にも寄生している菌なので他人にうつるということはありません。その他には、皮脂腺機能異常、発汗機能異常、脂質代謝異常、ビタミンの不足(B2,B6)、内分泌異常、ストレス、アルコールの多飲、環境因子、遺伝的要因などが考えられています。
治療法としては、ステロイドの外用剤、またマラセチア原因説に基づいてケトラコナゾールなどの抗真菌剤の外用も用いられます。発症の予防には、どんな食事がよいかは明確には証明されていませんが、脂肪の多い食事を避け、ビタミンBを多く含む食材や食物繊維の多い食材を積極的に摂るように心がけてください。

皮脂減少性湿疹

皮膚のバリア機能が低下し、細胞間脂質(セラミド)や天然保湿因子が失われ、水分が蒸散して皮膚が乾燥すると、乾皮症といわれる状態になります。皮膚の表面がカサカサして、亀甲状にひび割れができることもあります。さらに悪化して皮膚に炎症が生じると、かゆみや湿疹が発症します。これが皮脂減少性湿疹です。足のすねや太もも、腰回りなどによく見られます。加齢にともなうバリア機能の低下が主な原因で、冬など空気が乾燥する時期に悪化します。また、長時間の入浴や体の洗いすぎといった生活習慣も原因になります。バリア機能が低下しているので皮膚をかいたりすると、さらに炎症が悪化します。
治療法としてはヒルドイドⓇなどのヘパリン類似物質や尿素といった細胞間に浸透する保湿剤を塗り、炎症に対してはステロイドの外用を行います。かゆみの強い場合は抗アレルギー剤、漢方薬の内服を併用することもあります。外用薬はお風呂上りにすぐ塗ることが大切で、入浴後15分以上経つと水分は入浴前より減少してしまいます。また、洗浄力の強い石鹸でゴシゴシこすらず、泡立てた石鹸で、足底や間擦部といった汚れが付きやすい場所のみを洗うようにしてください。

接触性皮膚炎

接触性皮膚炎とはいわゆる「かぶれ」です。生活環境で用いられるあらゆるもので生じることがあり、シャンプーやコンディショナー、化粧品やマッサージオイルなども原因となります。これまで使用していたものに対してもアレルギー反応を生じるようになるため注意が必要です。
ここでは、ヘアカラー剤の接触性皮膚炎について説明します。ヘアカラー剤には化粧品として取り扱われる染毛料(ヘアママニキュアなど)と医薬部外品の染毛剤(ヘアカラー、白髪染めなど)の2種類があります。染毛剤には発色をよくするため酸化染毛剤を用いることが多いのですが、その中のパラフェニレンジアミンという成分がアレルギー性接触性皮膚炎を引き起こしやすいことが分かっています。アレルギーをもっていると、染毛後、半日から2日後くらいにかゆみや発疹、赤みなどの症状が起こります。症状は、最初が軽くても使用するたびに悪化し、中には血圧の低下や呼吸困難などアナフィラキシーと呼ばれる重篤なショック症状を起こすこともあるので注意が必要です。
原因の検索には、パラフェニレンジアミンを含む21種類のアレルゲンを診断できるパッチテストが保険診療で行えます。一度でもかぶれを疑う赤みやかゆみがでたらセルフテストはせずに、受診してください。治療には症状の程度により、ステロイドの外用、内服を行います。最も大切なことは、パッチテストでアレルギー反応が出た成分を含まない製品を選ぶことです。

光接触皮膚炎

光接触皮膚炎には光毒性と光アレルギー性があります。光毒性物質あるいは光アレルゲン形成には光線が必要ですが、それ以外は通常の一次刺激性接触皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎と同様の機序で発症します。光アレルギー性接触皮膚炎の原因化学物質としては香料や局所麻酔薬、サンスクリーン剤などの報告もありますが、ケトプロフェンという消炎鎮痛薬を含む湿布薬で多くみられます。痛みや炎症をとるために整形外科などで処方される以外に、薬局で購入する湿布にも含まれていることがあります。症状は湿布薬をはがしたところに紫外線があたると、湿布薬と同じ四角い形の紅斑や水ぶくれができます。これは、湿布薬をはがした後も皮膚にケトプロフェンが付着しており、腕や首など肌が露出する部分に貼って、はがした後に紫外線があたることによって生じるのです。紫外線の中でも波長が長く、くもりの日や窓を通して届くUVAに反応するので、晴天以外の日や室内でも窓際にいるときは注意が必要です。一度光接触皮膚炎になると、水ぶくれが治まっても3カ月間は発症する可能性があります。
治療は抗アレルギー剤やステロイド剤の内服とともに、患部にステロイド軟膏を塗布します。紫外線が強くなる6月頃からは発症リスクが高まります。症状が消えた後も、長そでやUVカット加工をしている衣服で物理的に遮光するなどして、紫外線から皮膚を守るようにしてください。また、日頃から日焼け止めを活用するのも有効です。

手湿疹

手湿疹にはいろいろな疾患が含まれ、いわゆる“主婦湿疹”には、主に指先に症状がでる進行性指掌角皮症、じくじくした湿潤病変が主となる自家感作性皮膚炎などがあります。指先がカサカサする乾燥型は皮膚が薄くなって弾力が失われ、ひび割れや指紋がなくなることも。じくじくした発疹や水疱などができる湿潤型は、かぶれなどが関係していることがあります。手のひらや指先には皮脂腺がないため、もともと乾燥しやすい部位です。水仕事を頻繁にすることで洗剤などに含まれる界面活性剤によって皮膚のバリア機能が失われ、乾燥やかぶれを起こしてしまうことが主な要因です。食器洗いや洗濯物を干すときなどには必ず手袋をする、水を触ったらこまめに保湿することを心掛けてください。湿潤型はアレルギー性のものもあり、日常接する化学物質や植物、金属などのアレルギーが原因のこともあります。手荒れを繰り返すようなら、早く症状を良くするためにも皮膚科を受診してください。
治療は乾燥型には尿素やヘパリン類似物質が入った塗り薬を使います。水疱やじくじくなどを伴う湿潤型の場合は、保湿剤のほかに、ステロイド外用剤などを塗布します。ただし、ステロイド外用剤を頻用すると指先の皮膚が薄くるため、アトピー性皮膚炎の治療で用いられるタクロリムス軟膏など、非ステロイド系消炎外用薬を用いるといい状態を保てることがあります。
悪化を防ぐには、刺激を避け、乾燥を防ぐことを心がけることが重要です。食器洗いなどの際はゴム手袋やビニール手袋を着用します。ゴム手袋を使うとかゆくなる場合は薄い綿の手袋の上からゴム手袋を着用します。水仕事をする際だけでなく、日常生活でも綿の手袋を着用すると刺激を受けづらくなります。水仕事の後や手を洗った後は水分をしっかりふき取り、保湿クリームなどで保護するよう心掛けてください。

シイタケ皮膚炎

シイタケを食べてから1~4日後に、胸やお腹、背中に強いかゆみを伴う赤いブツブツが生じ、その後かいたところが赤く線状になるのが特徴です。発症の仕組みははっきりと分かっていませんが、シイタケに含まれるレンチナンという物質が原因だといわれています。レンチナンが含まれる抗がん剤でも同じような症状が出ることがあります。シイタケは完全に火が通っていれば大丈夫ですが、バーベキューなどで生焼けの状態で食べると発症しやすいようです。乾燥しいたけを戻しただし汁でも起きることがあります。今までシイタケを食べてなんともなかった人でも、一度発症すると繰り返すことがあります。
治療は抗アレルギー剤を服用し、患部にはステロイド剤を塗布します。かゆみが強い疾患で、掻くことで二次的に悪化します。症状に気がついたら、早めに治療することが大切です。シイタケが原因で皮膚炎がおきるということはあまり知られていないため、気付かない人も多い病気です。バーベキューの後などに体幹部にかゆみの伴う湿疹ができたら、まずはシイタケ皮膚炎の可能性を疑いご相談ください。また、乾燥シイタケの戻し汁を未加熱で飲んだり、味付けされた乾燥シイタケのスナック菓子を食べたりする行為も発症の原因となるため注意しましょう。

毛虫皮膚炎

毛虫皮膚炎は、毛に毒がある毒針毛(どくしんもう)型と棘に毒がある毒棘(どくきょく)型の大きく2種類があります。毒針毛型は刺されるとかゆみが強く5㎜大のブツブツがたくさんみられます。毒棘型は刺されたところに強く痛みを感じるのが特徴です。毛虫皮膚炎の多くは、毒針毛型で主にチャドクガの幼虫によって生じます。発疹は赤みがあり、一つ一つがツルツルとしていて、最初からジクジクやカサブタになることはありません。毒針は風に飛ばされることもあり、毛虫に直接触れなくても発症します。首や腕など肌が露出している部分だけでなく、洗濯物に付着した毒針でお腹や背中などに発症することもあります。幼虫は5月ごろと8月ごろの年2回発生します。ツバキやサザンカ、お茶など庭や公園に多く植えられているツバキ科の植物を餌としているので、周辺の植栽を確認してください。
刺されたと気づいたら、水で患部を洗い流したあと受診してください。ガムテープで患部についた棘をとることも有用なことがあります。ただし、患部を擦ったり、なでたりしないことが大切です。治療はステロイド軟膏と、かゆみが強いときは抗アレルギー剤を処方します。予防策としては、ツバキ科の植物が周囲にある場合に、毛虫の繁殖時期(5~6月、8~9月頃)はあまり肌の露出の多い服装をしないことが効果的です。また、洗濯物は室内干しにするのがお勧めです。

スギ花粉皮膚炎

スギ花粉症は、目がかゆくなったり、くしゃみや鼻水が出たりという症状が代表的ですが、皮膚に症状が出ることもあります。これはスギ花粉皮膚炎と呼ばれ、女性に多い症状です。スギ花粉症の人やアトピー性皮膚炎の人は生じやすいといわれており、春先に肌荒れを起こすという人の中に、実はスギ花粉に対するアレルギーがあったというケースもあります。典型例では湿疹というより、じんましんに近い症状で、皮膚が赤く盛り上がり、かゆみを伴います。目の周りや首の露出部に発症します。近年では花粉の飛沫時期も早くなり、12月くらいから症状を訴える方もいます。他にも化粧品のかぶれや、酒さなど他の疾患のこともありますので、自己判断せず皮膚科を受診することをおすすめします。
外用薬ではステロイド剤なども有効ですが、アトピー性皮膚炎で用いるタクロリムス軟膏(プロトピックⓇ)も使用します。これは予防的にも使用できるので、毎年繰り返す方は発症前から使用するのもいいと思います。症状がひどい場合は、抗アレルギー剤の内服を併用して治療します。また、スギ花粉が体につかないようにすることも大切です。眼鏡やマスク、帽子などで皮膚を覆う、洗濯物を外に干さない、髪の毛はよく洗い流すなど、スギ花粉が体につかないよう工夫をしてください。帰宅後はシャワーなどで花粉を洗い流したうえで、保湿剤などでスキンケアをすることも大切です。

固定薬疹

固定薬疹は薬の成分に反応しておきるアレルギー反応の一種です。薬疹は通常、全身性に左右対称に皮疹が出ることが多いのですが、固定薬疹では皮膚の基底層周辺に炎症を起こすリンパ球が持続して存在するために、何度も同じ場所に繰り返し出現します。風邪薬や痛み止めで生じる頻度が高く、特定の薬を服用した後、30分から2時間ぐらいで発生します。特に多いのが口の周りや手の甲、指の間、陰部で赤紫がかった類円形の発疹が生じ、熱をもったような感じがあり、かゆみを伴うこともあります。炎症が強いと水疱を生じることがあるため、口唇や陰部に生じると、単純ヘルペスと間違われて来院されることもあります。
治療は原因となる薬の服用をやめることが一番です。本人に自覚がなくても、クリニックで問診をするうちに“そういえば…”と薬との関連性に気付くことがあります。女性は生理痛などで鎮痛剤を常用することがあるので、発症しやすい傾向があるようです。市販薬の場合は色々な薬剤が入っているので、その成分ごとにパッチテストをすると、どの薬剤に反応したか分かり、それを避けることで予防することができます。何度も発疹を繰り返したまま放置していると、色素沈着が強く残ることもあるので、早めに原因を特定することが大切です。

蕁麻疹

虫刺され様や地図様など形状はさまざまですが、赤みがあり皮膚がボコボコと盛り上がり、かゆみを伴います。かぶれ(接触性皮膚炎)などでも赤くブツブツしたものができますが、24時間以内に消えて跡が残らないのが蕁麻疹の特徴です。急性と慢性の2種類があり、急性の場合は2週間程度で発症しなくなりますが、慢性の場合は症状を繰り返し、長く続きます。人口の15〜25%が一度は経験すると言われています。
原因は多岐にわたります。急性の場合、2割はウイルスなどによる感染症に起因するもの、1割は抗菌薬などの薬剤、1割は防腐剤などの添加物、残りの6割ははっきりしません。慢性の蕁麻疹は8割が原因不明で、採血しても特定できないことが多いのです。なんらかの刺激で肥満細胞からヒスタミンという物質が放出され血管内に広がり、漏れだした血漿が皮膚表面に赤みやはれを引き起こします。
治療は主に抗ヒスタミン剤を服用します。症状が続く場合は、量や種類を変更し、H2ブロッカーといった胃薬、ステロイドの内服を併用することもあります。抗ヒスタミン剤といっても、最近は眠くなりにくい薬もありますので、まずは医師に相談してください。また、蕁麻疹は、血流がよくなると悪化しますので、熱い湯に長く浸かること、過度の飲酒、運動などは避けてください。

血管性浮腫

血管性浮腫は皮膚の真皮の炎症で、顔や手足などに突然、赤みのない腫れができます。特に多いのが目や口の周りです。かゆみはありませんが、何となくチクチクするような違和感があります。ただし、腫れは顏だけに限らず、体のあらゆるところに出る可能性があり、のどにできると気道がふさがれて、窒息する危険性もあります。遺伝性と後天性があり、遺伝性の場合はC1インヒビター遺伝子の欠損や機能異常が原因だということが分かっています。幼児期に発症し、一度治まっても思春期に再発して悪化する人も多く見られます。遺伝性以外の血管性浮腫は、骨髄腫や白血病など血液の異常に伴うもの、ペニシリンや降圧剤などの薬剤へのアレルギー反応で起きるもの、じんましんを伴うものなどさまざまなタイプがあります。腫れ自体は数日で引きますが、繰り返すことが多いので、血液検査をして遺伝性のものか確認します。血液中のC1インヒビターの欠損または、機能異常に起因する場合は、トラネキサム酸の内服を行います。重症例ではC1インヒビターを点滴で補充します。
血管性浮腫は、遺伝性の場合を除き、発症しやすい体質や生活習慣などはありません。疲労やストレスで悪化したり、女性では生理前に症状があらわれやすいということはありますが、現在のところ、発症を予防する手立てはありません。血管性浮腫を発症してしまったら、規則正しい生活とバランスのよい食事、適度な運動、スポーツなどをするよう心がけてください。

色素性痒疹

色素性痒疹は、1970年代に報告された比較的新しい疾患です。うなじや胸、背中など上半身に、虫刺され様の紅斑や紅色丘疹(きゅうしん:ぷつぷつと盛り上がりのみられる皮疹)ができ、広がっていきます。強いかゆみを伴い、何度も発疹を繰り返して広がり、色素沈着となります。虫刺されやかぶれ、薬疹などにも似ていますが、左右対称にできやすく、網目状に広がるのが特徴です。10〜20代の若い女性に多いのですが、男性や中高年の女性にも発症します。原因しては“ケトーシス”があげられます。ケトーシスとは、ダイエットなどで極端に糖質の摂取を減らしたりすると、糖質の代わりにエネルギーとして脂肪が分解されることにより生じる状態です。これが発疹を誘発する原因の一つとなります。
治療はテトラサイクリン系抗生物質やジアフェニルスルホンという抗菌剤を2週間から1カ月服用します。糖質不足にならないよう、バランスの良い食事をするよう指導します。放っておいて色素沈着を起こしてしまうと元の状態に回復するのが難しいので、かゆみの強い紅斑や紅色丘疹ができたときは早めに受診してください。

慢性痒疹

慢性痒疹とは強い痒みをともなう丘疹が孤立性に多発する反応性皮膚疾患です。湿疹と違って皮疹はのっぺりとはしておらず、ぽつぽつみられるのが特徴です。一方、皮膚掻痒症とは明らかな皮膚病変がみられないにもかかわらず、発作性ないし持続性に全身または局所の痒みを訴える疾患で異なるものです。アトピー性皮膚炎や妊娠、糖尿病、HIV感染症などが基礎疾患としてみられることもありますが、実際には他の疾患の合併もない原因不明のものが多いです。慢性という名前がつくくらいですので経過は長く、症状が数年続くこともあります。中には結節性痒疹とよばれる固い難治な丘疹に進展し、治療に難渋します。
治療はステロイド外用薬および、抗ヒスタミン薬、マクロライド系の抗菌薬の内服などを行います。ただし、基礎疾患がある場合はその治療を同時に行うことが重要です。難治例ではシクロスポリンの内服やナローバンドUVBなどの紫外線照射で効果を認めることもあります。

感染症

帯状疱疹

帯状疱疹は、水ぼうそうと同じ“水痘・帯状疱疹ウイルス”によって発症します。子どものころにかかった水ぼうそうのウイルスが体内の神経節に潜伏し、病気やストレスなどで免疫力が落ちたときに再活性化して生じます。
典型例では、最初に痛みが出現し、その部位や周辺に神経の走行に沿ったぽつぽつした紅斑、もしくは紅色丘疹が4~5日後に生じます.痛みを感じた時点でそこに湿布などを貼ると、皮疹をかぶれと勘違いし受診されることもしばしばあります。丘疹は水ぶくれとなった後、びらんとなり、2週間前後から乾燥してかさぶたになます.皮疹は神経支配一領域のみだけでなく,隣接した支配領域,さらには離れた支配領域に同時に出現すること(複発性帯状疱疹),両側性にみられることも稀ですがみられます。疼痛のみで、皮疹が出現していない場合の診断は難しく、1週以内に皮疹がみられなければ他の疾患、もしくは無疹性帯状疱疹と呼ばれる皮疹のない帯状疱疹も考えます.人によっては強い痛みにより夜も眠れないこともしばしばみられ、60歳以上では20%程度で3カ月以上も疼痛が持続します.このような3カ月以上持続する疼痛は,帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia: PHN)と呼ばれます。
治療には抗ウイルス薬と痛み止めの内服を用いることが多いです。抗ウイルス薬は発症から3日以内に服薬すると効果が得られやすいため、症状が出たら早めに受診してください。局所には消炎作用のある軟膏を塗布しますが、ワセリンなどでも除痛効果はみられます。初期の疼痛にはアセトアミノフェンや非ステロイド系消炎鎮痛薬、ステロイド、オピオイドの内服などを行い、コントロールがつきにくい場合は神経ブロックを考慮します。しかし、この処置はペインクリニックでのみ行うことができ、発症後、6カ月を経過した場合はあまり効果がみられません。
帯状疱疹には予防するワクチンがあります。水ぼうそうにかかったことがある人は、すでに水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに対する免疫を獲得していますが、年齢とともに弱まってしまうため、改めてワクチン接種を行い、免疫を強化することで帯状疱疹を予防します。予防接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、たとえ発症しても症状が軽くすみます。

帯状疱疹後神経痛

帯状疱疹の痛みは3期に分けられます。まず発疹が現れる4、5日前から皮膚や皮膚の深部に違和感やピリピリとした痛みを感じる前駆痛。その後、発疹とともに痛みがみられる急性期痛が続きます。これは、侵害受容性疼痛と言われる神経の炎症によるもので、通常は発疹が消えるとともに痛みもなくなります。しかし、3カ月経っても痛みが続くことがあり、これは帯状疱疹後神経痛(postherpetic neuralgia: PHN:ピーエイチエヌ)と呼ばれます。焼けつくような痛みと表現される持続痛、電気が走るような、と表現される電撃痛、かぜが吹いても痛い、服がすれても痛いと感じるアロディニア(異痛症)が特徴的ですが、逆に感覚が鈍麻することもあります。高齢になるほど、PHNを発症しやすくなります。これらの痛みは神経障害性疼痛と呼ばれ、急性期の炎症によって神経が損傷することにより神経線維の過敏化、疼痛抑制系の機能が低下することなどにより生じます。
治療はプレガバリン(リリカⓇ)やミロガバリン(タリージェⓇ)などの抗てんかん薬や三環系(トリプタノールⓇ、ノリトレンⓇ)、SNRI(サインバルタⓇ)などの抗うつ剤、オピオイド鎮痛薬(トラムセットⓇ、トラマールⓇ、オキシコンチンⓇ)などの内服を組み合わせて行います。急性期のように安静にする必要はなく、日常生活は普通に過ごしていただいて構いません。痛みがおさまらず、長く続く場合がありますので根気よく治療することが大切です。治療せず放置したり、治療を途中でやめたりして発症から時間がたつと治りにくくなります。発疹が消えても痛みが続く場合は、早めに受診してください。
しかし、PHNの一番の予防は帯状疱疹自体の発症を抑えることです。予防方法は大きく二つあり、一つは、睡眠や休息をしっかりとり、疲れやストレスをためこまないようにすることです。もう一つはワクチン接種です。50歳を過ぎたら、ワクチン接種ができ、帯状疱疹の発症や重症化を防ぐうえで効果的です。また、糖尿病や慢性呼吸器疾患、炎症性腸疾患、がんをわずらっている方は発症率が高いことが知られていますので積極的にワクチン接種を考慮してください。

帯状疱疹ワクチン

帯状疱疹の予防接種の対象年齢は50歳以上です。それは、帯状疱疹の発症率は50歳以上で多く、50代、60代、70代と加齢に伴ってさらに増加するからです。また、帯状疱疹後神経痛(PHN)への移行リスクも加齢とともに高くなります。ワクチン接種は、水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに対する免疫力を高めて、帯状疱疹の発症を予防することができます※。また、帯状疱疹を発症したとしても軽症ですみ、帯状疱疹後神経痛(PHN)などの後遺症の予防にもつながるとのデータもあります。かかりつけの医師とご相談の上、接種をご検討ください。 ※予防接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありません。

現在、帯状疱疹を予防するワクチンは次の2種類があります。

帯状疱疹予防ワクチンの種類と特徴

乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビゲン」 シングリックス
種類 生ワクチン 不活化ワクチン
接種回数 1回 2回(2カ月間隔)
他のワクチン接種をする場合の間隔 他の生ワクチンは27日以上
不活化ワクチンは制限なし
制限なし
摂取できない対象者 免疫制御剤などによる治療を受けている人、妊婦 特になし
副作用 軽度の注射部位の痛み、腫れ、倦怠感、発熱など(頻度は低い) 注射部位の痛み、腫れ、筋肉痛、倦怠感、発熱など(頻度が高い)
保険適用 なし なし
1回あたりの費用 ¥11,000(税込) ¥22,000(税込)
予防効果 約50% 90%以上
効果持続 5年ほど 9年以上

口唇ヘルペス

口の周りや、目、鼻や性器などの皮膚や粘膜に、チクチクした痛みを感じ、小さな水疱(すいほう)やかさぶた、潰瘍(かいよう)ができます。これは単純ヘルペウイルスによって生じ、神経節に潜伏感染するため何回も繰り返すことが特徴です。単純ヘルペスウイルスはHSV(herpes simplex virus)-1型、HSV-2型に分けられ、HSV-1は、主に口の周りに感染し口腔ヘルペスの原因となりますが、性器にも伝播し口と性器との接触を通して性器ヘルペスを引き起こすこともあります。皮疹がみられるときはキスをする行為、コップやタオルの使いまわし、性行為などは避けてください。HSV-2は、主に性交渉時に性器の表面、感染した皮膚、体液との接触によって伝播します.全世界でHSV-1に感染している人は67%、HSV‐2は11%いるとされ、単純ヘルペスウイルスはとても身近な感染症と言えます。
治療には抗ウイルス薬の内服を行います。重症例では点滴を行うこともありますが、外用薬のみでの治療は、皮膚のみにしか効果がないため勧められません。また、症状が治まってもウイルスは神経節に潜伏し、根絶することはできません。口唇では年2,3回、性器ではそれより多く、年6,7回再発する人が多くみられます。ウイルスはストレスや免疫力の低下、日焼け、風邪、性行為などによって再発しますが、実は大多数ではウイルスに感染していても全く再発しません。
再発した場合、早めに治療を開始すると症状が軽くすむことが分かっています。内服による治療法には3種類あり、再発時に病院を受診し内服薬を処方してもらう再発時投与、再発を繰り返す単純ヘルペス(性器でも口唇でも構いません)に対して予め内服薬を投与できるpatient initiated therapy (PIT:ピーアイティー)、概ね年6回以上再発する性器ヘルペスに対して毎日内服を行う再発抑制療法です。PITを行える薬剤は2種類あり、一つはファムビルⓇ、もう一つはアメナリーフⓇです。どちらも先発品にしかこの投与法の適用がありませんのでご注意ください。ファムビルでⓇは概ね年3回以上ヘルペスの再発を繰り返す人が対象で、症状がないときに内服薬を処方してもらっておき、発症したら自分で服用します。服用のタイミングは、以前発症した部位に再発の前駆症状とされるピリピリ・チクチクという違和感が生じたときです。2回内服しただけで5日内服する再発時投与と同等に効果がみられます。アメナリーフⓇでは年間の再発回数に規定はなく、1年に1回の再発でも処方は可能です。内服の回数が1回で済むのと、腎機能が低下している患者様でも用量を調整しなくてよいので使いやすいという特徴があります。ただし、 抗ウイルス薬はウイルスの増殖を抑える薬なので、発症初期に服用することがとても大切で、発症後すぐに受診できない方には有用です。 ヘルペスを繰り返している、忙しくて前駆症状が出てもすぐに病院に行けない、ヘルペスの再発にストレスを感じているという人はご相談してください。また、パートナーなどへの感染を抑制するには再発抑制療法が有用で、これは他の治療法にはない特徴です。
ヘルペスはストレスや発熱、風邪、過労、日焼けなどで体力や抵抗力が下がったときに再発することが多いため、日頃から適切に休養をとり、規則正しい生活、バランスのよい食生活を心がけることが予防につながります。

性器ヘルペス

性器ヘルペスは主にHSV-2により生じ、性交渉時の性器や周辺の皮膚、体液との接触によって伝播します。その感染は性器に症状がない無症候排泄時に多く起こり、気づかずにパートナーにうつしてしまうことがあります。また、口の周りにできるHSV-1による口唇ヘルペスが、オーラルセックスによって性器に感染することもあるため注意が必要です。お風呂や温泉のお湯から感染することはありませんが、アトピー性皮膚炎を患っている方や、外陰部に皮膚炎が生じている方は、比較的感染率が高いと考えられています。
ヘルペスウイルスは一度感染してしまうと完全に排除することはできません。本邦でのHSV-2の保有率は10%程度と低いため、感染すると「なぜ自分だけ?」と自己嫌悪に陥ることが多いことも分かっています。
治療の基本は抗ウイルス薬の内服となりますが、症状の再発を抑えるのには再発抑制療法が有用です。また、感染予防には性交中は常にコンドームを使用してください。パートナーがヘルペスを患っている場合は、セックスを避ける、パートナーにも同じことを求める、複数の性的パートナーを持たないことも大切です。

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス (HPV)6型、 11型によっておきる感染症で、性交渉などによって接触感染します。粒状の表面をもつ単独または複数の乳頭状、鶏冠状といわれるニワトリのとさかのようなイボが、外陰部や膣、肛門の周辺といった粘膜や、乳頭などの性交時に接触する皮膚にできます。痛みやかゆみがないため、気がつかずに放置すると大きくなったり、数が増えたりします。また、感染後すぐに発症するわけではなく、潜伏期間は平均3カ月程度です。ただし、中にはこのウイルスに感染していても発症しない人もいます。鑑別疾患として男性では真珠様陰茎小丘疹、女性は膣前庭乳頭腫症、男女共通のものとしては脂漏性角化症、ボーエン様丘疹症といった感染症でない疾患もあり的確な診断をする必要があります。
治療は、局所のサイトカイン産生促進や細胞性免疫応答の賦活化による、ウイルスの増殖抑制やウイルス感染細胞障害作用をもつイミキモドクリーム(ベセルナⓇクリーム)がよく用いられます。このほかに、液体窒素による凍結療法や電気メスなどで外科的に治療することもできます。 ただし、単独の治療では治癒力が60-90%と言われており、イミキモドと併用して治療することも有用です。また、尖圭コンジローマと診断されたら、パートナーも医療機関を受診することが勧められます。尖圭コンジローマは主に性行為によって感染するため、感染を防ぐには妊娠を希望しているとき以外コンドームの使用を心がけることが大切です。また、不特定多数の相手と性交渉を行うと感染するリスクが高まるので注意が必要です。さらに、ヒトパピローマウイルスはオーラルセックスを通して喉に感染することもあります。パートナーが尖圭コンジローマを発症しているときはオーラルセックスも含めた性行為は控えましょう。

足白癬

足白癬は水虫とも呼ばれ、真菌(カビ)の一種である白癬菌が感染しておこります。足底や趾間に皮むけや水疱ができ、かゆみを伴うこともあります。他にも爪や体幹や手、頭部、股部などに生じることがあります。診断は皮膚や水疱の一部を採取し、顕微鏡で白癬菌の有無を確認します。水虫は、かぶれや湿疹など、ほかの疾患と間違いやすいので、自己判断せずにまずはご相談ください。さらに近年、白癬の感染を簡便に診断するキットが発売されています。
治療は外用薬の塗布が中心となります。皮膚の状態に合わせてクリーム、ローション、軟膏の外用薬を使用します。大切なのが、薬の塗り方です。皮がむけた部分だけでなく、足裏全体に塗ります。また、患部がきれいになっても、角層に白癬菌が残っている場合がありますので、2〜3カ月は塗り続けます。白癬菌がいなくなるまで根気よく治療することが大切です。
湿気は白癬菌を増殖させ、梅雨や夏の時期に悪化します。銭湯やプールなど公共施設の足ふきマットなどに生息するケースも多いので、足を洗った後はよく拭いてしっかり乾かすことが大切です。また、同じ靴を毎日履いたり、汗をかいてそのままにすると菌が繁殖しやすくなります。家庭内に水虫の人がいる場合は、足ふきマットやスリッパ、タオルなどの共有を避け、こまめに洗濯するようにしてください。床に白癬菌のついた皮膚が落ちていると1年は生きていることが知られています。

爪水虫

爪白癬は足白癬と同じカビの一種の白癬菌に感染して発症します。足白癬に合併しているケースが多く、指趾から爪に白癬菌が侵入すると、爪が白く厚くなり、変形したりします。足白癬に比べ、治癒するまで時間がかかります。症状が似ている他の病気もありますので、まず爪白癬であるかどうか、検査を行います。検査では、爪の一部を採取して白癬菌の有無を調べます。白癬菌があれば治療を開始しますが、爪の表面からは薬の成分が浸透しにくいため、飲み薬での治療が基本となります。ホスラブコナゾール(ネイリンⓇ)は併用禁忌薬もなく、内服期間も12週と短くてすみます。ただし、内服ができない場合や、患趾が少ない場合などは、治癒率は下がりますが塗り薬もいい適応となります。
一度白くなった爪は、 白癬菌がいなくなっても元には戻らないので、白い部分を削って新しい爪が伸びるのを待ちます。その間も足をよく洗うなどの予防策も行うようにしてください。爪水虫かなと思ったら、まずは診察を受け、相談しながら治療を進めます。

マラセチア毛包炎

マラセチア毛包炎はマラセチア属の真菌(カビ)が増殖することにより発症する病気で、癜風(でんぷう)ともよばれます。原因となるマラセチア菌は人の皮膚に広く存在する常在菌ですが、皮脂を好み、発汗や暑さなど、高温多湿になると繁殖します。菌から出るリパーゼという酵素によって皮脂が分解されると、炎症物質に変化したり、菌に対する免疫反応が起きて炎症を起こすこともあります。典型例では、胸や背中、肩、二の腕などにポツポツとニキビのような赤い丘疹が多発します。ニキビに似ていますが、毛穴に皮脂が詰まった面ぽうがなく、ニキビ治療薬では治りません。若い人や運動をよくする人に多い疾患です。ニキビとマラセチア毛包炎が混在しているケースもありますが、顔以外の部位に吹き出物が目立つ場合は、多くはマラセチア菌によるものです。
マラセチア毛包炎の場合は、イミダゾール系抗真菌薬のケトコナゾールを塗ります。外用薬で治りにくい場合は、菌の繁殖を抑えるイトラコナゾールを内服しますが、常在菌なので再発を繰り返すことがあります。
予防としては、汗をかいたらそのままにしないですぐ着替え、ふき取ること、毎日シャワーまたはお風呂に入るなど、肌を清潔に保つことが大切です。放置して悪化するとポツポツと茶色く跡が残ることがあります。ニキビだからと自己判断せず、治りにくい場合は皮膚科を受診してください。

梅毒

梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum;TP)という細菌によっておきる感染症で、おもに性行為によって感染します。ただし、感染は普通の性器の接触による性交だけでなく、オーラルセックスやアナルセックスなど、性的な接触すべてでおこり、日常生活の性的行動で誰でも感染する可能性があります。2012年までは全国の感染者は毎年1000人以下でしたが、2016年は4000人を超え、2022年では約1万3000人と急増している疾患です。特徴的なのは、20代の若い女性の患者が増えていることです。はっきりとした原因はわかっていませんが、SNSなどを通じて出会いの場が増え、不特定多数の相手と性交渉の機会が増えていることも原因の一つとみられます。女性では母子感染によって胎児が先天性梅毒を発症することもあり注意が必要です。
症状は感染時期によって変化しますが、大きな特徴は皮疹が消退や出現をくりかえし、徐々に進行していくことです。経過は第1期から第4期に分けられ、治療薬のある現在では第3期、第4期の患者様はほとんどみられません。潜伏期間を過ぎた後、感染3週から3カ月で生じる1期疹では、感染部位の皮膚や粘膜の腫れや潰瘍(かいよう)ができます。放っておくと消えますが、感染後3カ月から2年くらいに病原菌が血液から全身に広がる第2期に入ります。体幹部や 手のひら、足裏などに赤い斑点のような皮疹がみられ、バラ疹、丘疹性梅毒疹、梅毒性乾癬とよばれます。皮疹はかゆみや痛みといった自覚症状がないのが特徴です。
梅毒の診断は、血液検査で抗体を測定することによって行います。梅毒血清反応には、梅毒トレポネーマの抗原を用いるTP抗原法と非特異的な脂質抗原(カルジオライピン)を用いる脂質抗原法の2種類があり、この2つを組み合わせて診断します。TP抗原法は特異抗体なので、梅毒の感染があれば必ず上昇し、診断の確定には必須の検査です。ただし、梅毒治癒後も陽性となるので、現在感染状態にあるかの判定には用いることができません。脂質抗原法は、治療によって低下するため病気の進行の程度や治癒判定に有効で、治療後も定期的に採血を行います。
治療はペニシリンの内服を病期にあわせて続けることになります。TPはペニシリンの耐性株の報告はなく、きちんと内服すれば治癒する疾患です。また、2021年にはペニシリン系の抗菌薬、ベンジルペニシリンベンザチンの筋肉注射が承認されました。早期梅毒(1期・2期)でしたら、1回の注射で完治します。3期まで症状が進んでも、1週間間隔で3回ほどの注射で効果が見られます。ただし、ペニシリン系のアレルギーを持つ方は使用することができません。
パートナーが感染した場合は症状がなくても必ず検査を受けるようにしてください。そして性行為時にはコンドームを使用する、複数の性的パートナーを持つことを避けるなどの注意も必要です。さらに梅毒にかかると粘膜に傷がつき、HIVにも感染しやすくなります。

アタマジラミ

アタマジラミ症は寄生虫による感染症です。戦後の大々的な駆除で一時激減しましたが、90年以降に再び流行し、今も毎年約 80万世帯で発症しています。保育園児や幼児に多い疾患です。ヒトに寄生するシラミには頭髪につくアタマジラミのほか、衣服につくコロモジラミ、陰毛につくケジラミの3種類があります。アタマジラミは 髪の毛にタマゴを産み付け繁殖します。タマゴは3日でふ化し、15 日程度で成虫になります。髪の毛の接触などでうつりますが、子どもに多いのは集団で行動することが多いためです。添い寝すると大人でも感染するので注意が必要です。頭皮から吸血するのでかゆみやその後の掻破に伴う湿疹が生じます。不潔にしているから発症するわけではないので、罹った子ども、両親にもその旨を伝えてあげてください。
髪にタマゴがついてしまうとシャンプーしても取れません。お子様が頭を掻いたり、髪にフケのような白いものがついていたら一度皮膚科を受診してください。アタマジラミの駆除には、フェノトリンを使った市販のシラミ駆除用パウダーやシャンプーを使用するようお話します。ただし、最近はフェノトリン耐性のシラミも増えており、目の細かい専用のクシでタマゴをすき取るのも有用です。かゆみがひどい場合は除虫と一緒に抗アレルギー薬の内服を併用することもあります。予防としては毎日洗髪する、身の周りのものの共用を避け衣類や寝具は定期的に洗濯をすることが大切で、また髪を短く切ることで治癒しやすくなります。

蚕食性点状角質融解症(さんしょくせいてんじょうかくしつゆうかいしょう)

細菌の感染によって足の指の腹側や足裏などが白っぽくふやけて、角質にポツポツしたくぼみや地図状のクレーターができます。20代の男性に多く、常在菌や付着した菌から生じるため、多汗症の人に多くみられます。
コルネバクテリアなどの常在菌によって、タンパク質を分解する酵素が発生し、角質が溶けてしまうのが原因です。一日中靴を履いて、よく汗をかくといった多湿で密閉された状態が続くと細菌が繁殖しやすくなります。汗をかかなくなる冬でも、温かい室内 でブーツなどを一日中履いて多湿状態が続くと、発症することがあります。症状が水虫に似ているため、市販の水虫薬を使っていたという人もいますが、原因が違うので効果はありません。
治療においては、まず水虫など他の病気と鑑別します。蚕食性点状角質融解症であれば、抗生物質の外用を塗布します。塩化アルミニウムなどで汗を抑えることも有効です。薬剤の塗布は、足を洗って充分に乾燥させてから行ってください。塗布後の患部は通気性を保ち、靴下は清潔なものに履きます。予防のためには足を十分に洗い清潔に保つ必要があります。

疥癬

ヒゼンダニ(疥癬虫)と呼ばれる小さなダニが皮膚に寄生しておこる皮膚疾患です。推定患者数は年間8~15万人といわれています。ヒゼンダニは、皮膚の最も外側にある角質に寄生し、人から人へと感染するので、疥癬の感染の拡大を防ぐためには早期発見と早期治療が重要です。特に夜になるとかゆみが強くなり、不眠になる人もいますが、ご高齢の方はかゆみの訴えが少ない場合もあります。皮疹は胸やお腹、腕、太ももなどに赤い小さな丘疹(きゅうしん)がみられ、男性では外陰部に結節(けっせつ)と呼ばれる数mmのしこりがみられることもあります。これはヒゼンダニの抜け殻や糞(ふん)に対するアレルギー反応です。また、疥癬特有な線状の皮疹があり、これはダニが皮膚から侵入してその中を進んだ痕跡です。指間によくみられ、ダーモスコープという拡大してみる機器で観察すると虫体を見つけられることもあります。
疥癬の治療は内服と外用に分けられます。 現在,疥癬に保険適用となっている薬剤はフェノトリン(スミスリン®)ローションとイオウ外用剤,イベルメクチン(ストロメクトール®)の内服のみです.他にクロタミトン(オイラックス®)クリームが用いられますが、実は保険適用はありません。ただし、疥癬治療では頻用され、保険での処方が認められています。治療効果が高いのはフェノトリン外用とイベルメクチン内服であり、虫体の多い角化型疥癬では両者を併用することもあります。また、薬の外用で大切なことは、症状が現れていない部位も含めて首から下の全身にくまなく塗ることです。特に手と指の間、足や外陰部には念入りに塗ることが大切です。

小児の皮膚病

とびひ

とびひの正式な病名は伝染性膿痂疹(のうかしん)です。水疱性と痂皮(かひ)性の2種類があり、子どもに多いのは水疱性膿痂疹です。水疱性膿痂疹は皮膚に赤みが出た後に、水ぶくれやびらんができます。痂皮性はカサカサした厚みのあるかさぶたが多発します。いずれも軽いかゆみがあり、体中に広がりやすく、「飛び火」がとびひの名の由来です。他の人にも感染するので、保育園などでは登園中止を指示されることもあります。
水疱性膿痂疹の原因は黄色ブドウ球菌で、皮膚や鼻の中などにいる常在菌です。虫刺されやあせもなどを引っかくと傷口から皮膚に入り込みます。痂皮性膿痂疹は、溶連菌の一種であるA群β溶血性連鎖球菌が原因となります。治療は抗菌薬の塗布や内服を基本とし、湿疹の治療を併用します。同じブドウ球菌でも株によって抗菌薬の感受性が変わるため、治りにくい場合は培養検査を行い、菌の同定、薬剤に対する感受性を調べることもあります。また、かゆみが強いときは、抗ヒスタミン薬の内服を併用します。溶連菌が原因の場合は、腎炎を起こす可能性があるので、皮膚の症状が治まっていても2週間は内服を続けることが大事です。
夏は菌が繁殖しやすいので、汗をかいたらシャワーで流す、手を洗い皮膚を清潔に保つことが有用です。一番大切なことは、皮膚に傷をつけないことです。虫刺されなどをかきむしらないよう、爪を短く切ります。

水いぼ

この疾患はポックスウイルスが原因で生じ、主に肌と肌の接触で感染します。肌のバリア機能が低下していると感染しやすく、アトピー性皮膚炎や乾燥肌の人は注意が必要です。表面がツルっとして水がたまっているようにみえることから水イボと呼ばれていますが、正式な名称は「伝染性軟属腫」です。手足の指などにできるイボと違い、腕の内側や胸、おなかなどに多く発現します。発現してすぐは、かゆみや痛みなどはありません。放っておいても、半年から数年で自然に治ることもありますが、患部にかゆみが生じることにより、二次的にとびひになることもあります。広がる前に早めに受診してください。また夏は、プールなどで肌と肌が触れ合う機会が増えるうえ、同じタオルやビート板などを共用するなどでも感染します。気になる場合は、早めに治療することが大切です。
治療はトラコーマ攝子(せっし)と呼ばれる特殊なピンセットで白い隆起部をつまんで取り除きます。取り除く際に、痛みを訴えたり、怖がる場合は、保険適用になっている麻酔テープを事前に患部に貼ってから治療を行うと痛みを軽減できます。

いぼ

いぼは疣贅(ゆうぜい)と呼ばれ、軟性線維腫、脂漏性角化症などの疾患も混同されていますが、ウイルス性イボをさします。主に手や指、足の裏などにできた小さな傷にヒト乳頭腫ウイルス(human papillomavirus: HPV)と呼ばれるウイルスが増殖し生じます。主にヒトからヒトへの直接的接触感染しますが、温泉施設、プール、ジムなどでの間接的接触感染でも生じます。また、自分でいぼを傷つけると別の場所に感染したりすることもあります。子どもに多い疾患ですが、大人にも生じ、その場合治癒までに数年要することもあります。
HPVには特異的な抗ウイルス薬が存在せず、治療法は多岐に渡ります。ガイドラインに記載があり推奨度の高い治療は液体窒素による凍結療法とサリチル酸外用です。凍結療法とは -196℃の液体窒素をいぼとその周りに、綿棒やスプレーなどを用いてあてることによりいぼを凍らせる方法です。通常1~2週ごとに行います。ただし、この治療は痛みを伴うので、小さい子どもにはモノクロロ酢酸の外用を行うこともあります。モノクロロ酢酸とは強い酸性を持つ化学物質で、いぼに塗ることで腐食・壊死させ、取り除くことができます。サリチル酸外用は角層の剝離に加え、疣贅に対する免疫を活性化させる作用もあるとされています。その他、グルタールアルデヒド、ビタミンD3の外用で効果がみられることもあります。また、難治例では炭酸ガスレーザー、電気凝固、V-Beam(Vビーム)なども施行します。炭酸ガスレーザーは水分に反応しやすい性質をもったレーザーで、レーザーを照射した部位の水分に反応して熱エネルギーが発生します。その熱エネルギーによって皮膚が蒸散し、照射した部分の皮膚が瞬時になくなります。V-Beamは赤血球の赤みに反応するレーザーで赤あざなどの治療に用いられますが、いぼの栄養血管をターゲットに照射することで治癒に導くことができます。

手足口病

手足口病は夏季に流行するウイルス性の感染症です。原因はエンテロウイルスとコクサッキーウイルスで、複数の種類があるので何度も感染する可能性があります。患者のほとんどは小児で、5歳未満の小児が80%を占めますが、まれに大人にも感染します。
口の中の粘膜や手のひら、足の裏、足の甲などに水疱性の発疹が現れて、1〜3日間発熱することがあります。他にも臀部や躯幹に出ると、水ぼうそうと区別がつきにくいこともあります。水疱は、かさぶたにならずに治ることが多く、1週間程度でなくなります。また、コクサッキーウイルスA6感染では1〜2カ月後に手足の爪がはがれることがありますが、その後新しい爪が生えてきます。口の中に水疱ができると、つぶれた後にできる口内炎(口の中にできた潰瘍)がひどく、食事や飲みものが摂れず脱水症状を起こすことがあるため注意してください。エンテロウイルス71の感染では中枢神経系の合併症を引き起こす割合が高いことが明らかになっており、無菌性髄膜炎を起こす場合にはその原因の90%を占めます。
手足口病には、今のところ特効薬や特別な治療法がなく、対症療法のみを行うことになります。周囲で手足口病が流行したら、手洗いをしっかりする、マスクをする、排泄物を適切に処理するなど心がけることが大切です。また、タオルやおもちゃ、スプーンや箸、食器などの共用も避けましょう。特に水疱の中にはウイルスが多く、潰す、破ることは控えてください。また、手足口病は症状がおさまったあとも、2〜4週間ほどは便などからウイルスが排泄され続けます。患児のおむつを替えたあとはしっかりと手を洗いましょう。

あせも(汗疹)

医学的には汗疹(かんしん)といい、乳幼児や子どもに多い疾患ですが、大人にも発症します。汗疹には汗が詰まる皮膚の深さによって3タイプあります。表皮の浅い部分(角層)の汗腺が詰まってできる水晶様汗疹は直径1~3㎜程度の小さな水疱で、かゆみもありません。表皮の深い部分(有棘層)の汗腺が詰まるのは紅色汗疹と呼ばれ赤いポツポツした発疹とのっぺりした赤みがでます。一般的にあせもと言われるものはこれにあたります。首や手足の関節、背中などに好発し、軽いかゆみを伴います。もっと深い真皮の上層部分の汗管がふさがれるのが深在性汗疹。のっぺりと盛り上がり、かゆみはありません。日本よりも高温多湿の地域でみられます。
水晶様汗疹は2、3日で自然に治るので特に治療は必要ありません。紅色汗疹の場合は、ひっかいたりするとブドウ球菌などが肌に付着してとびひのように化膿したりするケースもあります。ステロイド外用剤を塗って皮膚の炎症を鎮め、かゆみ止めを内服します。皮膚の炎症があるときは放っておかず、早めに受診してください。
あせもを防ぐには、「汗をかいたときに放置しないこと」がもっとも重要です。こまめに汗を拭いたり、着替えたり、ぬるめのお湯で洗い流します。高温多湿の環境では、エアコンをうまく活用するようにしてください。また、吸収性のよい下着や通気性のよい衣類を身につけて、汗をかいても濡れたままにしておかないことも大切です。

オムツかぶれ

おむつかぶれとは、おむつを長時間使用することによって外陰部や臀部が蒸れ、皮膚に炎症が起きる症状のことです。おむつかぶれには、単に皮膚が赤くなるものから(紅斑)、ぶつぶつができるもの(丘疹)、表皮が剥がれジュクジュクして強い痛みを伴うもの(びらん・潰瘍)、真菌感染を併発するものなど、さまざまな症状があります。おむつかぶれは、おむつの長時間着用によって外陰部や臀部の皮膚・粘膜が蒸れて引き起こされます。外陰部や臀部の皮膚・粘膜はもともとデリケートなため、長時間蒸れてふやけた状態で、そこにアルカリ性の尿や便が付着すると皮膚や粘膜にダメージを与えて炎症が起こるのです。さらに、一度ダメージを受けた皮膚や粘膜のバリア機能は著しく低下するため、皮膚や粘膜の深層にも炎症が波及したり、構造自体の破綻を招いて表皮が剥がれたりすることも少なくありません。
軽度なおむつかぶれの多くは、おむつの頻繁な交換、外陰部や臀部の丁寧な洗浄、入浴などを心がけることで自然に改善していきます。しかし、湿疹や表皮剥離が生じているような重度なおむつかぶれの場合は、それらの対処だけでは症状が改善しないことも多々あり、ステロイド軟膏を用いて炎症を鎮める治療をするのが一般的です。
おむつかぶれの原因の一つとして挙げられる「おしりの蒸れ」はおむつの交換の頻度や商品を見直すことで改善する場合があります。おむつ商品には吸収量ごとにさまざまなサイズや種類があり、通気性を持たせたお肌に優しい商品もあります。その人に合ったおむつ選びも重要になります。また、就寝直前の飲食を控えめにすることも対策の一つです。

はたけ

円形や楕円形の薄い色の斑点が皮膚にできる病気で医学的には単純性粃糠疹(たんじゅんせいひこうしん)と呼ばれます。子どもの顔のほほや顎の部分にできやすく、「はたけ」という名前で呼ばれることもあります。親指くらいの円形から楕円形の斑点がぽつぽつとでき、軽い痒みをともなうことがあります。はたけの原因は乾燥やアレルギーが原因とみられています。昔はカビの感染と考えられていましたが、はっきりとした原因はまだ解っていません。
はたけは自然治癒がほとんどで、特別な治療はしませんが、見た目など気になるときは非ステロイド系の軟膏などを使用することもあります。ステロイド外用などの強い治療をする必要はありません。予防にはこまめな保湿が大切です。

物理的・科学的皮膚障害

光線過敏症

まず“日焼け”と呼ばれる日光皮膚炎があります。ただし、これは誰にでも起こる異常な反応ではありません。これ以外にじんましん様の皮疹や紅斑、ぷつぷつ盛り上がる丘疹などを生じる光線過敏症(日光アレルギー)があり、中でも多いのは日光じんましん、多形日光疹、光線過敏型薬疹です。
日光じんましんは日光にあたるとすぐ発症し、かゆみを伴う蕁麻疹様の反応です。抗ヒスタミン薬の内服や遮光で治療しますが、場合によっては、人工的に紫外線を徐々に当てることでメラニンを増やし、光線に対する感受性を弱めることで反応しなくなることがあります。
多形日光疹は紅斑、丘疹、湿疹など多彩な皮疹を生じます。一部の人では通年性でなく初夏の紫外線が強くなり始めた時期のみに発症することがあります。治療はステロイド外用で炎症を抑え、遮光を徹底します。
光線過敏型薬疹 は特定の薬の使用後に日光にあたると現れます。原因となる薬をやめることで改善します。疾患により原因や治療法も異なるので、まずは皮膚科を受診してください。
遮光に関しては、日光じんましんは紫外線よりも可視光線に反応するため、日傘や帽子、服などで物理的に遮光することでより効果が得られます。多形日光疹は紫外線で生じるため、サンスクリーン剤の外用が有効です。光線過敏型薬疹は紫外線A波(UVA)が主な原因で、サンスクリーン剤に表示されているPA値の高いものを使用することをお勧めします。

しもやけ

しもやけは凍瘡(とうそう)とも呼ばれ、手足や耳たぶなどに赤い発疹や腫れが生じ、かゆみを伴うのが特徴です。赤く膨れ上がる樽柿型と、赤紫の斑ができる多形紅斑型があります。原因として、気温差で血流の調整がうまくいかないと、そこに炎症細胞が集まって発症します。発生しやすい温度は外気が4、5度で、寒暖差が10度以上ある時期で、実は厳冬期より、初冬や晩秋や春先などに多くみられます。
治療として毛細血管を拡張する働きのあるビタミンEや当帰四逆加呉茱萸生姜湯などの漢方薬の内服を行い血行の改善を行います。かゆみには抗アレルギー剤を処方し、かゆみを抑える軟膏など外用剤を使うこともあります。
予防としては手を洗ったらよく拭き、汗をかいた靴下などはすぐ着替えることも重要です。水分が残っていると、蒸発するときに皮膚温が下がり血流が悪くなります。末端が冷えないように手袋や足先にカイロを入れて温めることで効果がみられることもあります。通常は温かくなると発症しなくなりますが、症状が続く場合は、膠原病の一種の全身性エリテマトーデス(SLE)やシェーグレン症候群の可能性もあるので、血液検査など適切な検査を行うことが大切です。

熱傷

熱傷はいわゆる「やけど」のことで、熱によって皮膚や粘膜が傷つくことで生じます。症状の程度によって、熱傷は1度から3度の3段階に分けられます。

  • 1度:皮膚が赤くなる(充血、発赤)、ヒリヒリした痛み
  • 2度:水ぶくれ(水疱)ができる
  • 3度:乾燥、痛みを感じない(神経までダメージを受けて感覚がなくなる)

火などの高温に触れることによって熱傷は起こることが多いのですが、40度から55度位の比較的低めの温度でも低温熱傷と呼ばれる熱傷がおき、よりダメージは強くなります。熱傷になった場合は、患部を冷やし、炎症をとるステロイド軟膏や2次的な感染を抑える抗菌薬を塗布して治療します。初期に炎症を抑えることは重要で、まず患部を水道水などで十分に冷却し、受診してください。3度の熱傷では皮膚は壊死して再生しないため、壊死した皮膚を除去し、範囲の広さによっては植皮手術を行います。
やけどの原因となる火炎や熱は、家庭のいたる所にあります。やけどの原因となりやすい熱湯や火の元、暖房器具には十分注意してください。また、低温熱傷は、湯たんぽや暖房器具などの熱に長時間接触して起こります。暖房グッズや器具を扱うときは、使用方法に注意し、長期間の使用はさけ、使用したまま眠らないようにしましょう。特に糖尿病の方は皮膚の感覚が鈍くなるため、低温やけどを起こしやすいので注意が必要です。

炎症性角化症、角化症

尋常性乾癬

皮膚が赤く盛り上がり、表面が白っぽいかさぶたで覆われてフケのようにぽろぽろとはがれ落ちる病気です。そのほとんどは尋常性乾癬ですが、指の関節などに炎症を伴う関節症性乾癬、皮疹にうみや発熱などを伴う膿疱(のうほう)性乾癬、溶連菌の感染後 に発症しやすい滴状乾癬などに分類されます。
尋常性乾癬では通常1カ月かけて行われる皮膚のターンオーバーが1週間程度で繰り返されるようになり、過剰に生産された表皮の細胞が積みあがってはがれ落ちます。遺伝的要素に加え、ストレスや睡眠不足などの刺激、さらに肥満や飲酒などの生活習慣病的な体質が原因と言われています。日本では1000人に1人が発症しており、2対1の割合で男性に多いのも特徴です。
治療はステロイドや活性型ビタミンD3などの外用薬、皮膚の角化を抑えるレチノイド、他にも免疫抑制薬であるシクロスポリン、PDE4阻害薬であるアプレミラストなどの飲み薬に加え、皮膚に紫外線をあて免疫の働きを弱める光線療法を行います。近年では、乾癬の皮膚に炎症を起こす物質に対する抗体を点滴、もしくは注射する多くの生物学的製剤も保険適用になっています。生物学的製剤は高価ですが治療効果も高く、今まで完治を望めなかった重症例でも皮疹がなくなることもあります。また、最近ではチロシンキナーゼ(TYK)2阻害薬であるヂュークラバシチニブが保険適用となりました。これは内服薬ですが、効果が高いのが特徴です。ただし、生物学的製剤やチロシンキナーゼ2阻害薬は使用が認められた施設でのみ用いることができます。


尋常性乾癬はヒトにうつすことはありませんが、傷や摩擦による皮膚への刺激は悪化させる大きな原因になります。お風呂で患部を強く擦ったり、強く洗髪をしたり、襟や袖口が締まっているような皮膚に刺激を与えやすい服装は控えましょう。また、タバコや風邪をはじめとする様々な感染症は乾癬を悪化する原因になることがあります。こまめな手洗い、うがいをすることが大切です。

ジベルばら色粃糠疹(じべるばらいろひこうしん)

最初に胸や背中など躯幹にポツリと赤い発疹ができるのが特徴です。最初の発疹はやや大きめで直径は2〜6㎝程度。赤みがあり、周りはカサカサと皮がむけています。それが治るか治らないかのうち1、2週間で体幹部に赤みのある発疹が多発し広がります。特に背中はクリスマスツリーを描くように、左右対称に斜めに発疹ができます。10 代〜40 代の女性に多く、冬に発症することが多いです。原因としてウイルスや薬剤など、多様な要因が影響していると考えられていますが、はっきりした原因は分かっていません。
治療法はかゆみがあるときは抗アレルギー剤を服用し、発疹はステロイドの外用や紫外線(UVB)の 照射を行います。多くは1、2カ月の経過で自然に治りますが、治癒が遅い場合、類乾癬など他の病気による発疹のことがあるため、生検による確定診断を行うことが望ましいです。

毛孔性苔癬

皮脂ではなく角質が毛穴に詰まって角栓となり、ポツポツとした皮疹の出る病気です。触れると皮膚の表面がザラザラしていて、軽いかゆみを伴うこともあります。二の腕から肩、背中、太ももの前後、ひざ、すねの前面などに出やすいです。この疾患は、小学生くらいから思春期にかけて多く発症します。また、太った人やアトピー性皮膚炎の人に多くみられるのも特徴です。遺伝的要素が強く、原因もよくわかっていませんが、30 歳 ぐらいで自然によくなるケースもあります。そのままにしていても重篤な状態にはなりませんが、ザラツキが目立って気になるようなら受診してください。
治療には外用薬として、サルチル酸ワセリンや尿素入り軟膏を処方します。尿素やサルチル酸には、皮膚の角質を除去する効果があります。また、かゆみなど炎症がある場合はステロイド剤や活性型ビタミンD3の外用を行うと効果を認めます。妊娠の可能性がない場合はビタミンAの内服薬を処方することもあります。また、ダーマペンやピーリングなど自費診療による治療を行うこともありますが効果は限定的です。乾燥する秋冬は悪化しやすいので、発症している部分を外用薬で保湿することが大切です。

ケロイド

やけどや傷などの外傷が治る過程で、その部位もしくはその部位を含めた周辺が赤く腫れて盛り上がったようになります。ケロイドには真性ケロイドと肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)の2種類があり、見た目は似ていますが、肥厚性瘢痕 はケロイドに比べて治りやすく、自然治癒することもあります。一方、ケロイドはアレルギー体質の人などに多く、傷の範囲を超えて広がっていくのが特徴です。赤みの部分をつまむと痛みも感じます。肩や 胸、上腕、あごなど、皮膚の下にすぐ骨があるところにできやすく、ニキビや虫刺されなど小さな傷でも発症することがあります。
治療には症状の程度によって いくつかの治療法を組み合わせます。赤みや炎症を抑えるのがステロイド軟膏やテープ剤です。 また、シリコンゲルシートで圧迫し、血流を低下させて増殖を抑える圧迫療法も有効です。抗アレルギー薬のトラニラストの内服でも効果がみられることがあります。関節等に発症し、ひきつれを起こして動きが悪くなった場合は手術で皮膚を移植することも検討します。ケロイドは数週間から1、2カ月で広がっていきますから、傷が治っても赤く腫れあがっているときは早めに受診してください。ケロイドはなりやすい体質があり、一ヵ所でも傷がケロイドになっているヒトは不必要な外傷やピアスを含む手術を避け、肌トラブルは早めに治療することが大切です。

ウオノメとタコ

ウオノメやタコはどちらも外からの刺激によって、慢性的な角質層が厚くなる病気です。中心の芯のように角質層が厚くなり、圧迫すると痛みを感じるのがウオノメです。ウオノメは足裏にできやすく、骨の突起した部分や体重のかかりやすいところに発症します。ハイヒールなど幅の狭い靴を履くと、足が圧迫されてウオノメができやすくなります。一方、タコは指の関節にできるペンダコなど、生活習慣や職業、その人の癖などにより裏以外にもできます。サイズの合っていない靴や姿勢、歩き方のくせなどによって、皮膚の同じところにばかり物理的な圧力が加わっていることが原因ですので、根本的な原因を直さなければ、ウオノメやタコは繰り返し再発してしまいます。
治療は皮膚の角質を柔らかくするサルチル酸を塗ったり、増殖した部分を削り取ったりします。月2回まで削る治療に保険が適用されます。治療しても靴があたる部分などは再発しやすいので注意が必要です。ウオノメは、自然に治ることはあまりないので、痛みを感じたら早めに受診してください。ウオノメやタコの中には、いぼと形状が似ているものがあります。間違えやすいのですが、いぼはウイルスによる感染症なので治療方法が異なります。特に子どもの足裏にできるタコやウオノメように見えるものは、いぼであることがほとんどです。子どもの足裏を見て気になったら、ご相談ください。

色素異常症

老人性色素班

顔のシミの多くは老人性色素斑です。“老人性”とありますが、20 代でも出現します。40代では5割、50代は8割、60代以上になるとほとんどの人にみられます。紫外線が原因であるため、顔や腕の前面、手の甲、背中など、日光が多く当たる部分にできやすいのが特徴です。そばかすのような小さい色素斑が多数できる小班型、2~3㎝大の色素斑がいくつかみられる大斑型、濃い色と薄い色が混在する白斑黒皮症型があります。
治療は、Qスイッチ(キュースイッチ)レーザーの照射により効果がみられます。自由診療で、当院では、1㎜3,300円(税込)で行っています。
老人性色素斑と見た目が似ているものとして、脂漏性角化症やそばかす、肝斑悪性黒色腫(メラノーマ)などがあります。見た目で判断できる場合が多いのですが、分かりにくいものもあり、他の病気、特に悪性黒色腫の疑いがあれば、治療を始める前に皮膚生検を行い診断を確定する必要があります。老人性色素斑の治療をと思ったら、まずは受診してください。

口唇メラノーシス

くちびるに直径は1㎝以下の褐色や黒色の色素沈着がおきる疾患で、下唇にできやすいのが特徴です。一つだけでなく、何カ所かできるケースもあります。痛みやかゆみなどはありませんが、自然に消えることはなく、メイクなどをするときに気になるため受診するヒトが多いです。2対1の割合で女性に多く、特に20代に多い疾患です。リップを常に塗り直したり、こすったりするような慢性的な刺激や乾燥、紫外線などの刺激が原因と考えられています。アトピー性皮膚炎によって皮膚のバリア機能が低下したヒトにもみられます。また、唇だけでなく手足にシミが多発する場合はごくまれにポイツジェガーズ症候群という胃腸に多発するポリープを伴う遺伝疾患の可能性もあります。
これは自費治療になりますがQスイッチ(キュースイッチ)レーザーの良い適応となります(1㎜3,300円)。大きさや濃淡によって照射の回数は違いますが、唇は血管が多く他の部位に比べ、処置後の回復が早い傾向にあります。気になる場合は一度、皮膚科を受診してみてください。

肝斑(かんぱん)

肝斑とは、両頬やあご、鼻の下にできる薄茶色の色素斑で、左右対称、同じ大きさ、形で現れるのが特徴です。一般的なシミ老人性色素斑の場合、輪郭がくっきりしているのに対し、肝斑は全体的に境がはっきりしないぼやけた形で見えます。更年期にさしかかり女性ホルモンのバランスが崩れがちな30代後半から50歳くらいの女性に多くみられます。原因ははっきりとは分かっていませんが、悪化には紫外線と女性ホルモンが影響すると考えられています。そのほか、自己免疫性甲状腺疾患なども肝斑のリスクを高め、洗顔などによる顔への物理的な刺激も悪化の原因となります。
しみの治療というとレーザー治療が広く知られていますが、肝斑では一般的なレーザー治療の効果が期待できません。かえって色が濃くなってしまう場合があります。そのため、肝斑ではアミノ酸の1種であるトラネキサム酸や、ビタミンCの内服、メラニン合成抑制剤(ハイドロキノンなど)の外用薬で治療を行うのが一般的です。
ホルモンバランスの変化に伴って発生・悪化しやすいため、女性ホルモン剤を服用している場合にはホルモン剤の中止も考慮されます。ホルモンの影響であれば、出産後やホルモン剤の中止によってよくなることも多いです。
このような治療でも効果が現れない場合は、レーザートーニングという低いエネルギーでかさぶたを作らないように照射をするレーザー治療が検討されることもあります。
肝斑の発生・悪化を防ぐためには、第一に紫外線を避けることが大切です。帽子や日傘、サングラスなどを使用したり日陰を歩いたりして、紫外線対策を行います。また、肝斑は肌への物理的な刺激も発生・悪化の原因になるため、洗顔時にごしごしと顔を洗ったり、過度にマッサージしたりと刺激を与えないように注意が必要です。

尋常性白斑(じんじょうせいはくはん)

他の皮膚と比べ、あきらかに白い皮膚が限局性にある場合は“白斑”の可能性が高いです。今まで皮膚の色の差がなかった部分が白くなる多くは“尋常性白斑”と思われます。色素のもととなるメラノサイト(色素細胞)が減少したり、消失することによって皮膚の色が白くなっていきます。これはメラノサイトに対する自己免疫疾患が関わっていると考えられています。強いストレス、火傷、日焼け、強い摩擦などによって発症する場合もあります。
また症状は3つのタイプに分類されます。体の一部に白斑が認められるものを「限局型」、全身あちこちに白斑が認められるものを「汎発型」、また神経の走行に沿って白斑が認められるものを「神経分節型」と呼んでいます。
ステロイドの外用やタクロリムスなどの免疫抑制剤での治療のほか、光線療法(紫外線療法)の一つナローバンド治療は、UVBや局所紫外線照射療法(エキシマランプ)を行います。また2019年から保険適用となった高輝度のエキシマレーザーを照射します。白斑は尋常性白斑のほか、老人性白斑といった似た病気やほかに注意すべき疾患、例えば膠原病や円形脱毛症、薬剤や化学物質による脱色素斑があります。白斑に気がついたら、まずはご相談ください。

皮膚腫瘍、母斑

粉瘤

皮膚の下に袋状のものができ、そこに角質や皮脂などの老廃物がたまって徐々に大きくなっていきます。大きさは5㎜から5㎝くらいで溜まった角質(あか)がにおいを発することもあります。触ると硬めで中心に黒い点のような凹みがあるのが特徴です。そこから細菌が入ったり、角質が真皮内に漏れ出すと、赤く腫れることもあります。発症しやすいのは顔や首、背中、耳の後ろなどです。 類似する腫瘍には、外毛根鞘性(がいもうこんしょうせい)嚢腫があり、しこり部分は硬く頭皮に好発します。脂腺嚢腫は柔らかく、体のどこにもできて多発しやすいのが特徴です。また、どの腫瘍にも言えることですが、中身の老廃物を出しただけで袋を取り出さないと、またそこに老廃物がたまって再発します。
治療は外科的切除が第一選択となります。メスで腫瘍を含め紡錘形に切除し袋状になったものを切除する方法と、皮膚表面を丸いメスでくりぬき、穴から袋状になったものを取り出すへそ抜きという方法があります。へそ抜き法は切除する部分が少ない術式です。化膿している場合は、まずうみを出して感染を抑えてから治療します。自覚症状がない腫瘍が腫れたり大きくなってくるようなら、早めに受診してください。粉瘤は適切な除去手術をおこなえば、再発の可能性はほとんどありませんが、炎症があるときに除去手術をしたり、袋が完全に除去されていない場合には再発のリスクが高まることもあるため注意が必要です。

軟性繊維腫(なんせいせんいしゅ)

一般的にいぼ(尋常性疣贅)、水いぼ(伝染性軟属腫)と呼ばれるものはウイルス性ですが、首にポツポツとできるのはアクロコルドンやスキンタッグといわれる軟性線維腫で、ウイルス性ではありません。摩擦が多い部位にできやすく、首や脇に多発します。また、胸や背中など体幹やそけい部にできるものもあります。
首や脇にできる軟性線維腫は直径が1,2㎜程度で茶色や黒色もしくは皮膚色ですが、体幹にできるものは首のものよりも大きく、直径が数㎜から1㎝程度で皮膚色を呈することが多く、表面はシワシワしています。
40代以上の女性に多く、老化も原因の一つです。 痛みやかゆみなどの症状はなく悪性にはなりませんが、見た目にも気になるようになれば治療します。
頚部の小さなものであれば、はさみでの切除や液体窒素で凍結することによっても取ることができます。大きなものは切除し縫合、もしくは炭酸ガスレーザーで蒸散します。まずは受診して、ほかのいぼとの鑑別診断を受け、治療法を相談してください。

基底細胞がん

基底細胞がんは皮膚がんの一種で、60代以上の高齢者に多くみられる病気です。鼻や頬など顔に好発し、黒点が数年かけて大きくなり、隆起してきます。その後、徐々に中心部がくぼんで潰瘍(かいよう)になります。表面に光沢があるのが特徴で、これは結節型と呼ばれるタイプです。斑状強皮症型という黒みが少なく境界が分かりにくいタイプもあります。痛みやかゆみなどは通常みられません。
できたばかりのときはほくろとよく似ていますが、ダーマスコープというライトを当てて10~20倍に拡大する機器を用いると、鑑別はそれほど難しくありません。治療は手術で病変を切り取ることが第一選択になります。基底細胞がんは基底細胞上皮腫(上皮腫とは良性腫瘍を示します)とも呼ばれ、ほとんど転移することがなく、基本的に命に関わることはありません。ただ、放置すると大きくなっていき、皮膚の下にも浸潤していくことがあります。腫瘍は辺縁から3-5㎜離して切除しますが、大きくなると切る範囲が多くなるので、早めに治療することをお勧めします。基底細胞がんは日光曝露が原因で引き起こされる場合が多いため、紫外線対策を行うことも大切です。

メラノーマ

メラノーマは、悪性黒色腫と呼ばれる皮膚がんの一種で、メラニンを作るメラノサイト(色素細胞)ががん化した腫瘍です。欧米人に多く、日本人でも色の白い人や、日焼けしても黒くならない人に出きやすいと言われています。日本人に多いのは足の裏や手のひら、爪などにできるタイプですが、欧米人では躯幹にでることが多く、紫外線の関与が強くなります。急に大きくなった黒色斑は、メラノーマの可能性があり、診断に役立つのは、ABCDEルールです。A=左右非対称である、B=境界がはっきりせずもやもやしている、C=色の濃淡がある、D=直径が6㎜以上ある、E=盛り上がっているなどの特徴があれば、メラノーマの可能性が高くなります。またダーモスコープも診断には有用です。
治療は手術で腫瘍を切除することが基本です。早期に発見すれば、手術で治る病気ですが、発見が遅れて転移していると、手術ができないこともあります。臓器転移を生じていない例では手術による切除、所属リンパ節の生検もしくは郭清術、および術後補助療法が行われます。病変は境界より0.5~2cm程度離して切除します。所属リンパ節の転移が明らかでない場合は、センチネルリンパ節生検(原発部位から最初に転移するリンパ節)を、所属リンパ節転移が明らかな場合はリンパ節郭清術を行います。手術により完全な摘出が難しい場合や、臓器に転移がある場合は、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの化学療法を主体とし、外科治療、放射線治療を加えた集学的治療が行われます。一般的に放射線治療が効きにくいがんと考えられて来ましたが、近年では免疫チェックポイント阻害薬との併用による上乗せ効果が期待されています。
痛みやかゆみなどがないため放置してしまいがちですが、黒いほくろのようなものがあり、メラノーマの特徴に似ていると思ったら早めに受診してください。

日光角化症

日光角化症は前がん状態で、放置すると有棘細胞がん(ゆうきょくさいぼうがん)と呼ばれる転移する腫瘍への移行する可能性があるので注意が必要です。症状は、赤っぽくカサついたシミのような状態で、かゆみや痛みなどの自覚症状はありません。この病気は色が白く、日焼けで皮膚が赤くなる色白タイプの人に生じやすい傾向があります。仕事や趣味などで長時間、屋外で過ごし、紫外線をよく浴びている人は、日光角化症が生じやすくなります。
臨床症状により病型が分類され、最も多いのが紅斑型です。表面は赤っぽいシミのように平らで表面はカサカサしています。そのほか、やや盛り上がった淡い褐色や濃い褐色のシミのような色素沈着型、イボのように盛り上がった疣状(ゆうじょう)型があります。年齢が 60 歳以上でこのような状態がみられたら、早めに受診してください。
診断の確定には、病変の一部を切り取る生検を行います。治療法としては、患部をメスで切除する外科切除や液体窒素を使った凍結療法のほか、顔面または頭部の髪の毛のない部分であればイミキモドという免疫調整薬である塗り薬での治療も可能です。

ボーエン病

ボーエン病は表皮と呼ばれる皮膚の浅いところにできる皮膚がんの一種です。60歳以上に多く、おなかや背中などの体幹部や手足、陰部などに発症します。痛みやかゆみもなく、見た目は湿疹や日光角化症などに似て、赤茶色で少し盛り上がっています。表面はカサブタが付着したりしていて、5~10㎝程度まで徐々に大きくなります。表皮内がんなのでそこに留まっていれば転移しませんが、3~10%の割合で表皮の下にある真皮層まで浸食して有棘細胞がんになる可能性があります。そうなるとリンパ節や臓器などに遠隔転移する可能性もでてきます。多発する場合は井戸水を飲む習慣から起こるヒ素中毒、陰部などにできた場合はヒトパピローマウイルス感染が原因とされています。
ボーエン病の可能性を考えた場合、まず生検をして診断します。病変は5㎜ 程度離して切除します。 ボーエン病であれば転移をしないので、腫瘍を残さず切り取れば問題ありません。痛みやかゆみの症状がなく、見た目は湿疹などに似ているため、市販の薬をつけて対処されていることも多くみられますが、治りにくく症状が続く場合は、ボーエン病の可能性も考えて受診してください。

菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)

皮膚にできる悪性のリンパ腫の一つで、血液中のT細胞が悪性化、増殖して発症します。アトピー性皮膚炎乾癬(かんせん)に似ていて、最初は背中やお尻、太ももなどにだ円形の紅斑がいくつもできます。 この紅斑期が数年~10年近く続き、表面がカサカサすることもあります。痛みやかゆみなどの自覚症状はないため、そのまま放っておくと、次第に広がっていき紅斑に厚みができる扁平浸潤期(へんぺ いしんじゅんき)、腫瘤期(しゅりゅうき)へと悪化していきます。進行するとリンパ節やほかの臓器にも広がっていくので早めに治療することが大切です。
菌状息肉症の治療方法は、病変の広がりによって異なります。病変を認める皮膚局所に対しての治療方法に加えて、病期が進行している場合には全身治療が併用されることになります。菌状息肉症の紅斑期では、ステロイド外用、紫外線照射による治療を中心に行います。紫外線照射は効果が高く、初期であれば1週間〜1カ月に1度のペースで照射を行うことで、おおよそ長期寛解が望めます。扁平浸潤期の菌状息肉症に対しては、局所療法に加えてレチノイド(ビタミンA誘導体)やインターフェロンガンマ、ステロイドの内服、HDAC阻害薬(ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬)による薬物治療も検討します。それでもコントロールがつかない場合は、分子標的薬である抗CCR4抗体の投与、電子線照射、抗がん剤の投与などによる治療を行います。
菌状息肉症は痛みもかゆみもないので放っておきがちですが、進行すると難治なため気になる症状がある場合は早めに医師に相談してください。

太田母斑

太田母斑は、額やほお、まぶた、目の下、鼻、眼球などに発症する青色調のアザです。4対1の割合で女性に多くみられます。本来は表皮の基底層に存在するメラノサイト(色素細胞)が、表皮の下ある真皮層にできてしまい、皮膚からみるとアザのように見える状態です。メラノサイトが出来る部分が深いほど青っぽくなり、浅いと茶色っぽいアザになります。原因は分かっていませんが、約半数の人は生後1年以内、あとは10代の思春期のころに発症します。臀部などにできる蒙古斑(もうこはん)は年齢とともに消えますが、太田母斑は自然に消えることがありません。
太田母斑は痛みやかゆみなどの症状はありませんが、見た目の問題で気になる人は保険適用のあるQスイッチルビーレーザーやQスイッチアレキサンドライトレーザーで治療します。レーザー治療は照射後に炎症性色素沈着がおきるので、皮膚の状態を見ながら3~6カ月に1回程度、状態にもよりますが5、6回の照射を行います。


幼小児期からいつでも治療は可能ですが、レーザー照射は痛みを伴うため、幼児の場合は全身麻酔になります。治療を希望する場合は皮膚科を受診し、治療方法や時期などを相談してみてください。

扁平母斑(保険)

扁平母斑はいわゆる「茶あざ」と呼ばれており、健常人の10%にみられます。体のあちこちにでき、カフェオレのような色をしているため、カフェオレ斑とも呼ばれ、他のあざと比べて目立ちにくい特徴があります。生まれつきのみられることが多いですが、思春期頃になってから出現することもあります。また、日光に曝されることで色調変化が生じ、色が濃くなることもあります。生下時から大きめなものが6個以上みられる場合は、レックリングハウゼン病という疾患の随伴症状のこともあるので、気になるようなら皮膚科を受診してください。
扁平母斑ができる原因は、メラノサイトのなかのメラニンという色素を蓄えているメラノソームと呼ばれる顆粒が過剰に増えることによります。成長とともに薄くなることはありますが、自然に消えることはないので、治療を望む場合はQスイッチ(キュースイッチ)レーザーが選択されます。ただし、治療効果が得られにくいため、医師とよく相談してから開始するようにしてください。

皮膚付属器疾患

ニキビ

思春期にできるニキビは、男性ホルモンの働きが活発になり皮脂の分泌が増加することが主な原因です。それに対して大人のニキビは、不規則な生活、肌の乾燥、紫外線、喫煙、ストレスによるホルモンバランスの乱れなど、原因はさまざまです。また、思春期のニキビは顔の中心にT型にできますが、大人のニキビは、口やあごの周りを中心に、U型にできるが特徴です。
ニキビでは、初期に何らかの原因で毛穴の角質増殖がおき、詰まることにより面ぽう(コメド)ができます。そこに炎症がおきて化膿すると症状が進んでいきます。ニキビの状態がどの段階なのかで治療方法は異なりますが、初期では面ぽうの形成を抑える外用薬を中心に、炎症がある場合は抗菌・抗炎症の外用薬、症状がさらに進めば内服薬も併用して治療します。ただし、面ぽう形成を抑える外用はどの段階のニキビであっても必ず併用し、継続することで痕もよくなっていきます。治療中はニキビに触らないようにし、化粧品はノンコメド製品をおすすめしています。
自己判断で症状に合わない薬を使うと、症状を悪化させたり、化膿が進んでニキビ痕の原因になることもあります。また“酒さ”や“多嚢胞性卵巣症候群”といった病気でも、ニキビと似た症状が出ることがあります。ニキビぐらいと思わず、まずは受診したうえで、適切な治療が必要です。難治例では、LEDの照射や、ケミカルピーリング、脱毛に使用するジェントルレースなどを用いることもあり、効果をみとめます。ただし、これらの治療は自費診療となります。
ニキビ跡の赤みが気になる場合

原発性腋窩多汗症

病気などの原因がないのにワキに多量の汗をかく症状を“原発性腋窩(えきか)多汗症”といいます。また、ホルモンや神経の異常など、何らかの原因があって汗が出るタイプは続発性腋窩多汗症とよばれます。多汗症では、手足や顔に多量の汗をかくケースもありますが、特に多いのがワキです。ワキにはエクリン汗腺とアポクリン汗腺の2種類がありますが、体温調節を担うエクリン腺からの汗が必要以上に多いのが多汗症です。暑いところに行ったときや緊張したときに汗をかくのは、温熱発汗や精神性発汗という自然な体の反応です。一方、原発性腋窩多汗症の方は「今は汗をかきたくない」と意識するともっと汗があふれてくるなど、通常とは違った状況で汗をかいてしまいます。
治療には塩化アルミニウム液(自由診療・30 ㎖ 500円税込)の外用薬が効果も高く頻用されます。塩化アルミニウムが皮膚の成分と結合して汗腺をふさぎます。最初は毎日、効果が出始めたら2、3日に1回のペースで塗布していきます。また、2020年11月には日本で初めて健康保険が適用される抗コリン薬外用剤が使用できるようになりました。これは作用機序が異なり、第一選択となっていく可能性はありますが、薬価が高いため使用する場合は医師とよく相談してください。また、それでも治らない場合は、A型ボツリヌス毒素注射による治療法も選択肢の一つとなります。これは2012年11 月から保険が適用されています。ワキに直接注射して、交感神経から汗腺への刺激伝達をブロックします。効果は4〜9カ月程度持続します。このような治療に反応しない場合には内服薬による治療を追加することもあります。気になる症状がある場合は皮膚科を受診してみてください。

円形脱毛症

円形脱毛症は年齢や性別に関係なく発症します。4つのタイプがあり、多いのは1カ所だけ毛が抜ける単発型と2か所以上脱毛斑のみられる多発型、ほかに頭部以外の体毛も抜ける全身型、頭髪の辺縁が帯状に抜ける蛇行型があります。いずれも一部の毛だけが抜け落ちる症状は同じで、急速に進行します。
原因は頭髪に対する自己免疫反応です。通常の免疫反応は、体内にウイルスや細菌などの異物が入ってきた際にTリンパ球という細胞が異物を攻撃するというものですが、このTリンパ球が異常を起こし、正常な細胞を攻撃してしまうことがあります。これを自己免疫反応と呼びます。このようにリンパ球が毛根を攻撃することで脱毛を起こすのです。アトピー性皮膚炎など、ほかの免疫異常をきたす疾患があると併発しやすいことが分かっています。
患者様の年齢によって治療法が変わってきますが、一般にステロイド剤の外用や局所注射、抗アレルギー薬の内服などで治療します。こうした治療を続けても症状に改善がみられない場合は、凍結療法や光線療法、局所免疫療法(かぶれを起こす外用薬を脱毛部位に塗ります)などを組み合わせていくこともあります。急速に脱毛が進行する場合は、入院のうえ大量のステロイドを点滴し反応をみます。また、甲状腺機能異常や膠原病、梅毒などでも脱毛を起こすことがあるので、初めに血液検査を行い鑑別します。頭部の脱毛を自覚した場合は、早めに皮膚科を受診し的確な診断をつける必要があります。

睫毛貧毛症(しょうもうひんもうしょう)

睫毛貧毛症の症状としては、まつげが足りない、短い、少なくなってきた、1本1本が細いなどが挙げられます。加齢によるもの、まつ毛エクステンション、マスカラを落とすことによる外的刺激が原因です。また、アトピー性皮膚炎のような皮膚疾患、抗がん剤などの副作用が原因になることもあります。まつ毛は異物から眼を守る役割がありますから、まつ毛が少なくなるとゴミなどが入りやすくなります。
まつ毛が発毛可能な状態であれば、ビマトプロスト製剤の塗り薬で治療します(自由診療1本 22,000円税込)。ビマトプロストは2014年に睫毛貧毛症の治療薬として承認されました。この塗り薬を1日1回、まつ毛の生え際に塗布します。副作用として、 かゆみや目のまわりの黒ずみを生じることがあります。下まぶたに塗布すると、黒ずみがくまのように見えることがあるので、注意が必要です。

酒さ

頬や鼻、あごなど顏の中心部にほてりを伴うのっぺりした赤みやブツブツした吹き出物などが多発する症状です。
4つの類型があり、多いのは、赤みが広がる紅斑・毛細血管拡張型、赤みだけでなく発疹が伴う丘疹・膿疱型の2つです。ほかにも鼻にできる鼻瘤(びりゅう)型、目の周りにできる眼型があります。一般に「赤ら顏」は白人特有のように思われていますが、東洋人にも多く、特に30 代以上の女性に多く見られます。皮膚表面が慢性的に赤く、ほてりを伴うことがありますが痛みやかゆみはありません。
酒さの原因は遺伝的体質によるものが主ですが、紫外線やアルコール、香辛料、こするなどの物理的な刺激、サウナのような高温で刺激を受けることで悪化することもあります。
治療法としてはテトラサイクリン系の抗生剤を内服します。これは抗菌作用を狙って投与するわけではなく、抗炎症作用を期待しています。また、メトロニダゾールの外用も効果的です。難治例では漢方薬内服、他の抗炎症薬の外用を用い、組みあわせて治療する場合もあります。見た目でニキビなどと間違えやすいですが、酒さの場合は同じ赤みでも毛穴の詰まりがありません。ステロイド剤を使うと悪化するので、自己判断をせずに、顔の赤みが気になったら、まずは受診してください。

毛細血管拡張が目立つ場合は保険診療によるレーザー治療が可能です。

その他

単純性血管腫

生まれつきのあざには、いくつか種類があり、発生する部位によって名称が変わります。単純性血管腫は体のどの部位にも生じ、盛り上がらない赤い斑であることが特徴です。顔面、後頭部に発症する正中部母斑には2種類あり、眉間を中心に発症するサーモンパッチは2歳半くらいまでに自然に薄くなっていきます。後頭部に発症するウンナ母斑は、大人になっても残る率が高いのが特徴です。いずれも見た目が似ていますが、それぞれ発症する部位で鑑別できます。まれに、てんかんなどを起こすスタージ・ウェーバー症候群など、発症部位の下に病気が隠れているケースもありますが、これは頭部と目の検査などで分かります。
正中部母斑は、ウンナ母斑であっても髪に隠れるため、特に治療は必要ありません。単純性血管腫の場合は色素レーザーが保険適用となっており治療効果も高いです。3カ月ごとに5〜10回くらい照射し治療を行います。顏などの部位は効果が出やすく、手足など末端は時間がかかる傾向にあります。顏などの目立つところにあざがあることで、いじめやからかいの対象になると気になる場合は、就学期前に治療を開始することをおすすめします。

毛細血管拡張症

真皮の毛細血管が拡張して血流が増え、肌の赤みがとれない状態です。頬や鼻の下などにできやすく、寒暖差や緊張などで一時的に赤くなるのではなく、同じ場所に持続的に赤みが続くのが毛細血管拡張症です。毛細血管が拡張する原因は多岐にわたります。肌が乾燥しすぎによる刺激、紫外線による刺激、ニキビや脂漏性湿疹などによる皮膚の炎症など、血管の拡張した状態が長く続くと調節が効かなくなり、毛細血管が開きっぱなしになります。頻繁な飲酒や寒暖差なども原因の一つになります。内臓疾患が影響することもあり、肝硬変の場合は胸や首などにクモ状血管拡張が起こります。女性は妊娠によって血流が増えることで発症することもあります。
毛細血管は一度拡張してしまうと自然には戻りません。命に関わるような深刻な病気ではありませんが、顔にできやすいので見た目などが気になる人は保険適用の医療用レーザーで治療が可能です。色素レーザーは血管内のヘモグロビンに反応し、異常な血管だけを破壊します。赤みの強さや状態にもよりますが、数回に分けて照射します。湿疹を合併している場合はその治療も合わせて行います。 顔の毛細血管拡張症の予防に関しては、化粧品も肌にピリピリするなど刺激がある場合は使用を中止する事や、使用する際も角質層を削り取ってしまわないようにやさしく肌にふれるようにすることをおすすめします。また、あまり熱いお湯で洗顔すると乾燥しやすく毛細血管も切れやすくなります。とにかく保湿ケアが重要です。

【保険診療】

単純性血管腫(毛細血管奇形)、いちご状血管腫(乳児血管腫)、毛細血管拡張症については、保険適用がなされます。年齢制限や回数に制限はありません。ただし、レーザー治療は1回で終わるものではなく、複数回の治療、通院が必要です。治療は反応をみながらですが、目安としては、毛細血管拡張症や血管腫であれば5回以上の施術が有効とされています。

【自費診療】

ニキビ跡、老人性血管腫等の美容目的として治療は、自費診療となります。また、アンチエイジングのために行うこともあります。Vビームはお肌にハリをもたらすコラーゲンを増産し、小じわなどを改善する効果も期待できます。

老人性血管腫

老人性血管腫はルビースポットともいわれ、胸や背中、おなかや腕にポツポツとした赤いほくろのような隆起が現れます。加齢ともに発症する割合が増加するので老人性と言われますが、実際は10代からでも発症し、40・50代の7~8割にみられます。異常な毛細血管の増殖により生じますが、はっきりした原因はなく、体質によるものが大きいと考えられています。
老人性血管腫は痛みやかゆみもなく、重篤な症状になることはありません。通常は1㎜程度の大きさですが、放っておくと3~4㎜になることもあります。見た目が気になるという人には、色素レーザーで治療します。小さいものであれば1回で満足する結果が得られます。自由診療で当院の場合は、1~5個11,000円(税込)です。気になる方はご相談ください。

IgA血管炎

IgA血管炎は4歳 ~7歳の小児に発症することが多く、特に男子に多く見られる疾患で す。真皮の浅いところにある細い血管が炎症をおこしてぽつぽつ盛り上がりのある紫斑ができます。皮膚症状に痛みやかゆみはありませんが、関節痛や腹痛、大人の場合は腎障害など内臓疾患を併発することがあります。 紫色の発疹は足にできることが多く、特にひざ下から足の甲あたりにかけて現れ、お腹や腕などに広がる人もいます。溶連菌の感染や薬剤アレルギーなどが誘因となって発症することがあります。 紫斑ができる病気はほかにもあるので、まずは血液検査や生検をして鑑別します。皮膚生検をすると血管壁にIgAの付着がみられます。血管の炎症なので、安静にすることが大切です。軽症の場合は安静にしていれば数日間で自然に治ることもあります。 安静にしても治らない場合はトラネキサム酸やステロイドなど、症状や重症度に合わせて2~3週間服薬します。腎障害を併発するような重篤な症状があれば入院して治療することもあります。いずれにしても、早めに受診して病気を特定することが大切です。

脂腺増殖症

脂腺増殖症は、頬や額、鼻などにできる黄色がかった丘疹(きゅうしん)で、その中心部が凹んでいるのが特徴です。50代以上の男性に多く、65歳以上の男性の約10%に見られると言われています。
一つだけポツっとできることもありますが、多発することもあります。女性の場合は単発例が多いようです。痛みやかゆみを伴うことはありません。毛穴の周辺の皮脂が増えてくると起きる症状で、加齢によって脂腺のターンオーバーが遅くなることが原因の一つと考えられていますが、詳しい原因は分かっていません。ステロイド剤を長期に使用した人や免疫抑制剤などを服用した人は発症しやすいことが分かっています。
良性の丘疹なのでそのままにしておいてもよいのですが、自然に消えることはなく、数年かけて徐々に大きくなります。当院では見た目が気になる人には炭酸ガスレーザーで削る治療を行っています。

眼瞼黄色腫

まぶたの上下や周辺にできる黄色くて平たい膨らみとしてみられます。特に痛みやかゆみなどはありません。直径1㎝程度のものから2、3㎝まで次第に大きくなるケースもあります。中高年の女性に多いのが特徴です。
血液中のリポ蛋白(たんぱく)という物質をマクロファージが取り込み、皮膚に浸潤して隆起します。高コレステロール血症の人がかかりやすいと言われますが、コレステロール値と関係なく発症する場合もあります。ただし、まぶたの上下など広範囲に広がる人は高コレステロール血症であることが多いです。 見た目上で気になる場合は、プロブコールという高脂血症の薬を服用しつつ、液体窒素で同部を刺激し細胞を破壊することで縮小してきます。それ以外にも炭酸ガスレーザーで蒸散する治療や、外科的に切除するやり方もあります。再発しやすいので食事に気を付けながら根気よく治療することが大切です。また、脂質異常症などの原因があるときには、しっかり原因疾患を治療することも大切です。

指趾粘液のう腫(ししねんえきのうしゅ)

手足の爪と第一関節の間にできる良性のはれものです。大きさは5~8㎜ぐらい。ドーム型で中心部は半透明になった水ぶくれのような見た目で、痛みはありません。40代以上の女性に多く、指先を使う人にできやすいようです。指趾(しし)粘液のう腫(しゅ)には2つのタイプがあります。一つはヒアルロン酸が溜まってできるもの。小さな傷などが原因で、それを修復する過程で線維芽細胞がヒアルロン酸を過剰に分泌し、皮膚下にたまって水ぶくれのように見えます。もう一つは滑膜が突出して水ぶくれのようになるガングリオンタイプがあります。関節が変形するヘパーデン結節と合併して発症することもあります。
通常痛みはありませんが、放っておくと爪が圧迫されて変形することがあります。水疱に針を刺して中のものを排出し、ステロイドを局注し、上からテーピングで圧迫します。ほかには炭酸ガスレーザーで蒸散したり、液体窒素で凍結し治癒させる方法もあります。ただし、再発を繰り返す難治例が多いです。へパーデン結節に伴うガングリオンタイプの場合は骨棘を除去する施術を行うこともあります。自分で潰したりすると細菌が入って化膿しやすいのでまずは皮膚科を受診してください。

結節性紅斑

ひざから下などに直径2〜5㎝くらいの赤みのある皮疹が数個できて、触ると痛みを感じます。男性よりも女性の方がかかりやすく、20代から40代に多くみられます。急性の場合は4、5週間、慢性の場合は数カ月続くこともあります。表皮や真皮の下にある皮下脂肪組織の炎症で、全身性の疾患に伴って発症することもあります。全体の2割を占めるのが溶連菌感染症などの細菌感染によるものです。
ほかにはベーチェット病やサルコイドーシス、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、大動脈炎症候群などに伴って発症しますが、全体の6割は原因がわかりません。全身性の疾患の有無を問診した上で、脂肪組織を含めて皮膚生検を行い、診断を確定します。その後、原因や症状に応じた治療を行います。細菌の感染が原因の場合は抗菌薬を投与し、痛みや赤みに対してはヨードカリの内服を処方します。症状が強い場合はステロイドの内服なども行います。全身疾患がある場合は、その治療も必要です。安静にすることが大切なので、激しい運動などは避けるようにしてください。似たような症状の皮膚疾患も色々あるので、まずは皮膚科を受診し診断を受けるようにしてください。

太藤病(おおふじびょう)

太藤病は、正式名を好酸球性膿疱(のうほう)性毛包炎と言います。何らかの原因で毛穴に好酸球が集まり、うみを持った膿疱がプツプツと多発する疾患です。赤みが強く出て、とてもかゆいのが特徴です。頬にできやすく、見た目は酒さやニキビ、アトピー性皮膚炎などにも似ています。手足にできることもありますが、85 %は顏にできます。20~30代の若い男性に多い病気です。1970年に京都大学の太藤重夫教授によって発見されたもので、発見者の名前を取って太藤病と呼ばれています。原因など詳しいことは分かっていませんが、エイズ(H IⅤ感染症)の合併症として発症することもあります。
太藤病はアトピー性皮膚炎や酒さなどにも似ているため、なかなか診断がつかないことがあります。血中の好酸球数の増加がみられるため採血や、皮膚の一部をとって検査する生検を行って鑑別します。治療は消炎鎮痛薬であるインドメタシンが奏功します。 湿疹やアトピー性皮膚炎だと自己判断して市販薬を用いると、こじらせる場合があります。同じ症状が続く場合は、一度ご相談ください。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

手のひらや足の裏に小さな水疱ができ、それが 広がっていくことがあります。“手湿疹”と間違えられることもありますが、足の裏にも出たり、痛みを伴うようであれば『掌蹠膿疱症』を疑います。小さな水疱が次第に黄色く膿をもち、その後かさぶたになって皮膚の角層がはがれてきます。この膿疱は無菌性で細菌などは関係ありませんのでヒトにはうつりません。掌蹠膿疱症性骨関節炎という合併症を発症し、胸の鎖骨部の関節に強い腫れや痛みを生じることがあります。背骨や腰などにも炎症を生じ、患者様が腰痛などと勘違いいていることもあります。原因として、金属アレルギーや扁桃腺炎、喫煙も関係していると言われますが、はっきりとした原因が分かっていません。膿疱性乾癬の類似疾患ではないかとも考えられています。しかし、発症には特定部位の感染、生活習慣が関与していると考えられています。発症を予防するには、歯周病などの慢性的な感染症が生じた場合は速やかな治療を心がけることや、禁煙するなどの対策を講じることが大切です。
治療は活性型ビタミンD3軟膏やステロイド軟膏で膿疱を抑えます。皮膚の細胞増殖や炎症を抑制する紫外線療法も行います。アプレミラストの内服、重症例では生物学的製剤の使用も行うことがあります。
慢性化していることが多く、治療には時間がかかります。まずはご相談ください。

サルコイドーシス

サルコイドーシスは皮疹から見つかることがありますが、肺や心臓、眼、リンパ節など体のさまざまな器官に肉芽腫(にくげしゅ)と呼ばれる炎症細胞が浸潤した結節ができる病気です。詳しい原因は分かっていません。皮疹にはかゆみや痛みといった症状はありませんが、肺にできると息切れや咳、呼吸不全を起こしたり、心臓にできると不整脈が起きたり、眼にできるとブドウ膜炎を起こしたりと全身に症状が現れます。しかし、多くの症例では胸部X線写真で両側のリンパ節の腫大(Bilateral Hilar Lymphadenopathy; BHL)が健診などで偶然発見されます。この場合には、自覚症状はほとんどありません。また、若くてBHLだけ見つかり、あまり症状もないという患者様では、8割がた自然になおってしまいます。サルコイドーシスは国の難病に指定されていて、男女ともに20歳代と50歳代以降に2峰性に多く、とくに男性は若年者、女性は高齢者に多くみられます。
皮膚の症状からサルコイドーシスが疑われる場合は生検を行って診断します。皮膚病変は皮膚サルコイド、瘢痕浸潤、結節性紅斑に分類され、皮膚サルコイドには結節型、局面形成型、皮下型、びまん浸潤型、その他があります。皮疹は多様で、分からなければサルコイドーシスを疑えと言われているほどです。皮膚サルコイドは、生検をするとサルコイドーシスに特徴的な類上皮細胞肉芽腫が認められます。瘢痕浸潤は膝などに昔すりむいた痕にできてくる皮疹で、やはり肉芽腫が生検で認められます。結節性紅斑は病気のはじめに下肢にできる紅斑で、生検しても肉芽腫は認められず、ほとんど早期に消えてしまいます。治療はステロイドを塗ることから始めます。7~8割は治療しなくても2年程度で自然に治りますが、肺や心臓などに発症した場合は重篤になる可能性もあるので、いつまでも治らない皮疹がある場合は、ご相談ください。